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※初00本「鏡に映るせかい」より
「……ヴァーチェの攻撃がかすったぁ?どういうことだ、おやっさん」
格納庫が見渡せるラウンジで、自らの相棒を含めた多数のハロがキュリオスに群がっているのを眺めていたロックオンが、後ろにいた整備主任を振り返る。
「どうしたもこうしたも、言った通りだよ」
俺だって聞きたいくらいだ…等とぼやきながら、『おやっさん』ことイアン・ヴァスティ整備主任は頭をかく。
彼はゆったりと歩いてロックオンと同じように窓辺に立つと、修復真っ只中の機体を見やった。
「損傷自体は大したもんじゃない。せいぜい、装甲が少し焦げた程度だな」
「しかし、アレルヤがなぁ…」
「なんだ、何か心当たりはないのか?」
ため息交じりにハロの挙動を眺めているマイスター達の兄貴分の言葉が意外で、思わず問い返す。
と、兄貴分―――ロックオンは、弟分たちには見せないであろう、少し困った風な笑みを浮かべた。
「おやっさん、俺だって人間だぜ?マイスター全員の様子に気を配ってられる程、余裕がある訳じゃない」
確かに、気づいたときには気を配るようにはしているが――――精神面のサポートなんてものは、ガンダムマイスターとしては完全に任務外。
要するに、慈善ボランティアなのだ。
その慈善ボランティア事業に対して十分な見返りを求められては困る。
言外にそう釈明したロックオンの気持ちを汲んだイアンは、「そりゃ悪かった」と苦笑した。
「勿論、可能な限りは見てるつもりだけどな。皆他人を寄せ付けないタイプで―――――」
「でも、お前さんアレルヤとは結構…」
「…仲良さそうに見える、ってか?」
イアンが口にした途端、ロックオンの目が真昼の猫のように鋭くなる。
本人にはそのつもりはないようだが、その瞳はまるで森の中で獲物を狙う狩人のようで――――そうではないと分かっていても、自分が獲物の一匹になったような気分になる。
金縛りにあったかのように動かなくなった体は、しかし思わずごくりと息を飲んだことでなんとか自由を取り戻した。
それとほぼ同じタイミングで、ロックオンもイアンから目を逸らす。
「あいつが一番、他人を寄せ付けないよ。優しいからな」
一見矛盾しているとしか思えないような理由をつけて、ロックオンは独り言のように呟く。
「この何年かで大分懐いたけど――――やっぱり、肝心な所はさっぱりだ」
「―――――お前さんが、ねぇ」
「ま、それとなく聞いてはみるよ。期待はしないで欲しいが、な」
損傷箇所の修復が終わり、引き続き整備作業に入ったハロたちの姿を横目に、ロックオンは踵を返す。
その背に気づいた相棒のハロが、ガラス越しに『ロックオン、マッテ!マッテ!』と叫んでいたのがイアンの耳に入ったが、ロックオンはそれすら聞こえていないかのようで、そのまま部屋を後にした。
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初00本(コピー本)より。
まだロックオンとアレルヤ観が確定していなかった頃だったので結構恥ずかしい(笑)
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