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皇帝虚飾論(TOA)

※テイルズオブジアビス / ピオジェ・マルクト帝国クーデターイベント捏造妄想本プレビュー。
1月に再版するので一応のっけておく。









 


いずれオールドランドの大地…いわゆる外殻大地が降りてくる予定の場所、魔界―――クリフォトに古くからあるという唯一の街、ユリアシティ。
少々予想外の行動―――ガイの一件だ―――もあったが、キムラスカもマルクトも、今の状況を鑑みて、互いに納得する形で、この街で和平条約を締結した。
戦争などしていられない理由が出来てしまった、というのが和平のきっかけだったなどというのは…また皮肉な話だが。

しかし、それでもこれ以上無駄に戦闘が起きることはないのだ、と思えば喜ばしいと思えるもので。
子供たちの手前、そして現状を考えれば不適切だと思ったが、ジェイドは密かに喜んでいた。
自分自身は戦争についてどうこうという思いはないものの、やはり優秀な部下を多数失ったのは、師団としても痛手だった。
それを成したのが戦争だったのだといえば、戦争が嫌だといえるのかもしれない。
しかし、だから喜んでいるのか、と問われれば、それには頷けなかった。
死体という名のサンプルを収集していた時代もあったものの、現皇帝が望むのが戦のない国家関係だというので、それに追従しているだけだ。
そう自分の気持ちに理由付けを行ってはみるものの、しかしそれでも、説明しきれない何かが残っていた。
事実、少しだけだが喜ばしいと思っている、ただそれだけが真実であり、それに対する考察は意味を成さない。
なぜなら、ジェイド自身がそれを理解できていないからだ。
数式に至っても、人間の感情に至っても、答えは存外単純な公式から成り立っているのは知っているが―――殊、自分自身のことは良く分からない。

だが、それを誰かに尋ねるのも滑稽な上に癪だったので、考えないことにした。

「――――本当に皮肉なもんだなぁ」

「……陛下もそう思われますか」

ノエルに送迎を頼みに行って帰ってくると、テオドーロ市長の計らいで宛がわれていた客室で待っていたピオニーが、外を見ながら笑っていた。
ノックもなしにがちゃり、と扉を開けて入ってきたのがジェイドだとすぐに分かったのだろう。
それ故の、施政者らしからぬ発言なのだ。

「…も、って事は、お前もそう思ったか」

「この条約が締結される事になったいきさつを知った者なら、誰もが思う事でしょうね」

「…………だろうな」

半分だけこちらを向いて皮肉げに吐き捨てると、彼はまた外へと視線を戻した。
古代の技術でこの液状化した大地に佇む暗色の街は、中に注ぐ月光のような薄暗い光もそうだが、外の混沌とした状況を見ても、やはり人が住むには向いていなさそうだ。
実際人が住んでいるには住んでいるのだが――――もし大地が全て降下したら、皆こんな色合いの街になってしまうのだろうか。
あの燦々と降り注ぐ陽の光や、青い木々、色とりどりの草花を見ることは叶わなくなってしまうのだろうか。
大地が、皆地下へと沈んでいく―――――それを知ったら、まず民はそのことを考えるだろう。

だが、施政者たる自分たちはどうだろうか。
戦争など、一般の民からすれば、家族や財産、幸せすら奪われるろくでもないものだろうに―――悲しいかな、国家は国民を守るという大義名分の名のもとで、国家のプライドなどというちっぽけなものを守るのに必死になっているだけなのだ。
戦争とは、結局国民の為といいながら、国家が国家の為に行っているに過ぎない。
国家として継続できなくなる事態を回避する策、その一つが和平であったり、戦争であったりするのだ。

「国民の為を思うなら、戦争なんて百害あって一利なし。軍備拡張にも食糧確保にも財源が削られて、国家としても弱体化するだけだってのに―――――こんな理由でもなければ、和平だって結んでくれたかどうか」

「へーいか。近くのお部屋にインゴベルト陛下がいらっしゃるのをお忘れですか?」

「分かっている。これは俺個人の、ただの嫌味だ―――『マルクトの皇帝』としてのものじゃない」

ジェイドの言葉に、ようやくこちらを向いたピオニーは、苦笑を浮かべながら肩をすくめてみせた。

「…それを聞いて安心しました」

その表情が、いつもの彼のものであるのを確認して、ジェイドもようやく安堵の息を吐く。
皇帝に即位してからというもの、彼は何かと重い責を負い過ぎてきた。
これ以上、彼の肩に重い鉛が圧し掛かってしまえば、どうなるか――――なるべく、そうはならぬように配慮してきたつもりだったが。
それでも、優しい彼は何かと荷物を進んで背負ってきてしまっていたのだろう。
ただの殿下であった頃からの希望であった和平、戦争を終結させるという偉業を成し遂げた筈のピオニーは、どこか疲れているようにも見えた。

「明日の朝、グランコクマへ戻りましょう。その後は予定が詰まると思いますので、今宵はごゆっくりと」

「あぁ」

なんでもないように手を振って、退室許可を出すピオニー。
だが、自分が存外に疲れた表情をしていることには気づいていないのだろう。
この場所が彼にあの表情をさせているだけなのだろうか、それとも、何か別の要因があるのだろうか――――…感情は単純な構造から成っている、と思っているジェイドでも、彼の深い心のうちまでは推し量ることができなかった。
だが、その場で何を言ったらいいのかも分からずに、ジェイドはただ黙って扉を閉めることしかできなかった。
しかしながら、一抹の不安を覚えるような皇帝の様子を見てしまった身としては、どうにもきまりが悪い。

(こんなことをしている場合ではない、と分かってはいますが)

自分で自分に言い訳をしながらも、ジェイドは扉を一度見つめ、すぐに踵を返した。









ジェイドが早足で向かっていったのは、旅の仲間たちのもとだった。
別に、今後のことを話し合う為でも、出発の準備の為でもない。
ただ、ちょっとした我侭を伝えに行ったのだ。

「―――――別にいいけど…どうしたんだよ?いきなり」

「いえ、少々雑務を残してきましてね」

今やリーダー格として皆も認めるところとなってきたルークに、早速、グランコクマまでピオニーの供をしてくる、と告げたら、不思議そうな顔をされた。
確かに、自分でも唐突な申し出であったのは自覚している。
しかし、ジェイドはこうしてルークたちと共に旅をしてはいるが、あくまで『マルクト軍人』であり、世界の事も重要とはわかっていても、本来の職務も同じくらい重要なのだ。
何より、ピオニーはマルクト内においても最も重要な人物。
その彼の警護だと公言してしまえば、ルークの疑問も晴れるのかもしれないが――――それを言っても更に質問を重ねられそうな気がして、言葉を濁すに留めた。


そもそも、何故警護などという名目が必要なのか、自分でも不思議なくらいなのだ。
フリングス少将はルグニカ平野での一戦で疲弊しているし、他の要職の人物たちも皆多忙である為、警護の人材はほんの僅か。
とはいえ、グランコクマのすぐ目の前で下ろしてもらえるようノエルには指示してあるので、心配もあろう筈はなかったのだが―――――。
それでも、ジェイドの中にある何かが、それではいけないと警鐘を鳴らしていたのだ。

「ま、どの道アルビオールがないと俺たち動けないし。行ってこいよ」

「すいません では――――…」

形ばかりの謝罪を口にして、ジェイドは来たとき以上の早さで立ち去っていった。



 

■                    ■





―――――相変わらずの空を見上げてから、ジェイドは部屋から出て行った。
体内時計が指すには、早朝といった時間であるようだが――――ユリアシティの朝は、どうにもそうした意識が薄れがちだ。

ともあれ、朝、と定義しているに過ぎない、昼夜変わらず薄暗い空から視線を外し、ピオニーを迎えに行く。
見送りのつもりだろうと彼も思っているのか、ジェイドがただ一人部屋に迎えに来たことに、何の疑問も抱いていないようだった。

「陛下、ちゃんと起きていらっしゃいますか?」

「ああ、いつも通りだ。可愛いあいつらに早く会いたいよ」

冗談を返してくる余裕はまだあるようだが、瞳はどこか遠い。
完全に目は覚めているのだろうが、やはりピオニーの気配には覇気がないように思えた。

「―――――お待ちしていました。さぁ、こちらに」

街の出入り口で待機していたノエルが、アルビオールのタラップを指してそう声をかけると、ピオニーは、ああ、と短く応じてそこへと向かっていく。
その後姿を見送ってから、ジェイドはノエルに昨日ルークに報告したことと同じ内容を伝えた。

「そうですか…では、キムラスカ側の皆様をお送りしてから、今一度グランコクマにお迎えにあがりますね」

「手間をかけさせてしまってすいませんね。お願いしますよ」

にこ、と微笑むと、彼女も分かっている、という風に愛想笑いで返してくれる。
そうしてジェイドが同じようにアルビオールへと乗り込んでくると、さすがのピオニーも驚いて、どうしたのかと視線で問いかけてくる。
だが、

「ただ、雑務を忘れてきただけですよ」

ルークと、それにノエルにも言った同じ口上を舌の上に乗せただけで、後は笑って誤魔化してやった。
ノエルがアルビオールを起動させ、エンジン音が段々と高まっているのが聞こえてきたから――――すぐに飛び立ち、会話もままならなくなるだろう。
そう思えば、何となく気が楽になる気がした。
楽になる気がしたのは、きっと、今のピオニーと話していたくないからだろう。
こんな、弱い男ではなかった筈だから…こうしていると、まるで別人を見ているかのような錯覚に陥ってしまい、どう対応したらいいのか、分からなくなる。
それだけ、ピオニーという男は影響力の大きな男なのだ。



「…………」

「………………」

ノエルは操縦に集中しているし、ピオニーもジェイドも、他の護衛も口を開こうとはしない。
そうしている間にもアルビオールはぐんぐん上昇を続け、やがて外殻大地へとその船首をあらわす。
一気に飛び上がって青空の下へと戻ってきたアルビオールの翼は、陽の光を反射してきらきらと輝いていた。

「―――――ジェイド」

「…はい?」

高度も安定し、規則的なエンジン音が響くようになった機内で、ピオニーはユリアシティにいた時と同様窓の外を眺めたまま、ジェイドに声をかけた。

「………お前は『皇帝』って役職について、どう思う」

「―――――それはまた、国家の根幹に関わるような難しい質問ですね」

「いいから。お前の考えを述べろ」

まるで会議の時のような静かな声音は、彼の言葉が冗談でも言葉遊びでも時間つぶしでもなく、本気なのだということを思わせた。
これは、その質問にどう答えるのが適切か、ではなく、とにかく正直なジェイドの思う真実を述べろ、という事だ。
それは時に皇帝の機嫌を損なうことにもなりえるし、臣下としてあるまじき発言を導くこともあるが――――いつでもピオニーは正直であることを望んでいた。
逡巡した後に、ジェイドはゆっくりと口を開く。

「『権力集中』という点においては、皇帝という最高権力者の存在は良しとはいえません。暴君と化した時、歯止めになるものが存在しなくなり、誰かが悪役に――――そうですね、暗殺なり何なりを企てなければならなくなりますから」

例としては、キムラスカ・ランバルディアが挙げられる。
あの国は、このマルクトの皇帝以上に国王への権力集中が激しい。
一応元老院らしい組織は存在するものの、象徴的な意味合いしかないようで――――現実として、ほぼ国王の「鶴の一声」で物事が簡単に決定してしまっている節がある。
そこを、ローレライ教団の大詠師モースにつけ込まれたのだから―――キムラスカはそこから学習しなければならない。
マルクトも、確かに最終的な承認は皇帝が行うことになっているが…元老院に加えて貴族院も存在しており、この二つの院と施政に関わる上層部の会議を通らなければ、いかなる物事も通らない。
三重にもなる施政監視システムが、短い歴史ながらにマルクトをここまで発展させたのだ。
簡単にマルクトの歴史を想起しながら、ジェイドは言葉をつなげる。

「―――――言葉は悪いかもしれませんが、権力集中という危惧はキムラスカにこそ必要で、マルクトには基本的に必要ありません。建国時のシステム確立が素早く的確だったのでしょう――――皇帝が確かに最高位の権力者ではありますが、それが暴走しない仕組みが確立されています。」

「…で?お前は皇帝についてどう思っているかの答えには」

「私は、『皇帝』という役職は、状況によって流転するものと考えます。賢帝であるうちは、象徴としても施政者としても、不可欠な存在。しかし愚帝となった暁には、議会や院によって、排除される――――実に不確定な地位の最高権力者です」

「…………そうか」

「ご心配なく。陛下が賢帝でいらっしゃる間は、どんな馬鹿が襲撃してこようと、私が全力でお守りしますよ」

「……全力でとか、お前、キモいぞ」

「ははは、性分です♪」

完全にその心を晴らすことは出来なかったようだが、気は幾分か紛れたようだ。
少しばかり明るくなった表情を見て、ジェイドはほっと胸を撫で下ろす。

そしてやがてまた外へと視線を向けたピオニーに倣って外を見やると、丁度、遠目にだがバチカルの街が見えてきた。
巨大な穴に立つ塔のような構造になっているあの街は、頂点に城が存在し、その次に貴族の住まい、庶民の住まい、と完全に住居までが階層化している。
それはマルクトの首都であるグランコクマも似たようなものだが、高さでもって明確過ぎるほどに分けている訳ではない。
あそこ―――キムラスカの首都バチカルは、完全な階級・階層社会であり、爵位がなくてはまず城のあるエリアまで行くことすらかなわない。
そんな保護の下にあるバチカル城で真綿に包まれて育ったであろうインゴベルト陛下は、お世辞にも民の生活を完全理解しているとはいえないだろう。
まぁ…それもインゴベルト陛下は、の話であり、次代を担うであろうナタリアならば、その辺りをよく考えている。
階層社会とはいえ、キムラスカにも希望はあるだろう。
段々と雲に隠れ、見えなくなっていく街を見やりながら、ジェイドは小さく微笑んだ。



「悪かったな、ジェイド。いきなり変なことを聞いて」

やがて外を見るのに飽きたのだろうか、少しいつもの調子に戻った風な声で、ピオニーが唐突に切り出した。
完全に吹っ切れた訳ではないのだろう―――未だ、その声色は濁っている。

「…何か、あったのでしょう?」

くれぐれも他の者の前では、そんな情けない顔はなさらないで下さいね、と小さく付け足しながらも、ジェイドは気遣わしげな視線を投げかける。
そもそもこの自信と努力の固まりたる男が、自分の地位について尋ねてくるなどと…何かあった証拠だ。
それをいつまで経っても教えてくれない事に、正直ジェイドは少し苛立っていた。
自分は、何のためにピオニーの傍にいるのだ。
皇帝の懐刀と呼ばれる程に彼の力になってきた自分にも、話せないような事など、ない筈だ。
しかし、それも驕りだったのだろうか――――そんな、ジェイドらしからぬ思いにとらわれる程に、ピオニーの様子はおかしかったのだ。
常に力に満ちていた気配が、今では少し陰りが見える程。
ジェイドでさえこうなのだから、他の重臣たちだって、幾ばくかの不安を覚えているかもしれない。

「――――なぁに、いつもの事だ」

「……また、手紙ですか?」

「あぁ。ちょっと大掛かりな『悪戯』の予告みたいなもんだな」

部外者―――ノエルが傍にいる為だろう、遠巻きにだが、ピオニーはグランコクマの宮殿に届いた一つの不穏な書簡について、教えてくれた。
大掛かりな悪戯とは――――クーデターか、暗殺予告か。

「一部に、俺が大嫌いだって言う奴らがいるらしくてなぁ。ノルドハイムが今洗ってる所だ」

「…………将軍が」

…反乱分子が、どうやら軍部に潜んでいるらしい。
和平条約調印の場だったというのに、どうしてマルクト側に重要人物の集まりが悪かったのか――――今になって分かった。
確かに、反乱分子にとっては、今が好機だろう。
世界が混乱している最中、国家に反旗を翻す馬鹿がどこにいるのかとも思うが――――不安だからこそ、逆に疑心暗鬼になっている者も多い。
そういう時にこそ、冷静な施政者の存在が欠かせないのだが、それが分からない連中なのだろう。
しかし、まさかキムラスカにではなくマルクトに、そんな分子が現れようとは。
しかも、このピオニーの気落ちのしようからして、相当に過激な集団なのかもしれない。

「言うことは豪胆なクセに、行動自体は随分と慎重な連中だ。でかでかと宣言はするんだが、実際に実行されたもんは殆どない。子供の悪戯レベルだ」

「しかし、それなら陛下がそこまで気にされる事は」

「…………」

にぃ、と。
困っている風にも、楽しそうにも見えるピオニーの笑みは、ジェイドの想定を無言で否定していた。
ピオニーが言うには、彼らは予告は行うものの、実際には行動を起こすことは滅多にない、口ばかりの連中なのだという。
反乱分子は軍部に在籍しているのだ。
確かに口では言っても、行動を起こせば、下手をすれば所在がばれ、どんな目にあうかも分からないから―――そう簡単に行動には移せないのだろう。
だが、だからといって放置しておける連中でもないのだ、とピオニーは暗に告げている。
飛行状態が安定しているのをいいことに、ゆっくりと立ち上がってジェイドのすぐ傍まで来ると、ピオニーは耳元で小さく囁いた。

「――――軍部だけじゃなく、民衆にも…協力者がいるという話だ」

「!」

低い、風の通り抜けるような小さな声で、ピオニーはジェイドの知らぬ間に進んでいた状況を克明に伝えてくる。

「……この度の大地降下の一件で、民も不安になっているんだろう。この機に乗じて、何かがある――――そう思って、あえて重臣の連中は皆置いてきた」

「…………陛下、では貴方も」

「危険だろう、な。」

だからお前が来てくれて正直助かった、と、まるで他人事のように言って、ピオニーは笑った。
この馬鹿は、どうにも自分に頓着しない。
恐らくは、皇帝とはいえ自分一人の命より、民の安寧と混乱の早期収束を第一に考えたが故の決断だったのだろう。
だが、彼を支持する民や臣下、ジェイドにとっては、それが一番の愚かな策に値するのだという事を、分かっていない。
深い深いため息をついた後、ジェイドは少しばかり距離をとって、諌めるように彼を見た。

「私が最初に言ったこと、覚えていますか?」

「ああ、覚えてるぞ。」

「なら」

「『国民があってこその国家』だ。それに則って下した決断が、街の情勢の安定化だった――――それだけだ。こればかりは、懐刀とはいえ、お前にも口出しはさせない」

言う彼の眼差しは、いつもの強さを取り戻していた。
それが虚構のように見えない訳ではなかったけれど―――――…ジェイドはあえて、知らないふりをした。

「…では、口出し出来ない私は、勝手に貴方を守ることにしますよ」

「頼りにしてるぞ」

全く頼りにしていなさそうな、やる気のない声でそういうと、ピオニーは、ぽん、と軽くジェイドの肩を叩いた。
皇帝という役職が故、と分かってはいたが――――自分自身の命でさえ、この男は国家という礎の為だと思えば、いとも簡単に投げ出せるのだ。
その頓着のなさは、確かにジェイドも通じる所があったが――――この男に関しては納得がいかずに、珍しく内心が荒れていくのを感じた。
どうして荒れていくのかという理由、その感情の根幹が何なのかには、気づかずに。









++++++++++++++++++++++++++++++

もう結構前に出した本な上に萌えの方向性も間違ってる本なのですが(笑)、自分的に一人でも多くの人に読んでもらいたくて、少部数再版することにしたものです。
PJ再録編集してるときもこれを入れるか入れないかで散々迷った挙句、予算の関係で泣く泣く入れなかったのを今更後悔しています
私の中ではこれが一番自分のPJ観が出せてると思ってます
懐刀萌え+親友主従萌え+友情萌え…!

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