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※こりずに…っていうか誰も見てるひといないと思うけど書きたくなったので書いた。
相変わらず殿かねのつもりだけど概ね単なる熱い主従
激短
大丈夫か、と問うたその言葉の意味を、やはりはき違えているらしい。
自らその勘違いをそのままにしておきながら、景勝は苛立つ己を抑えきれないでいた。
誰が、情勢のことを問うたというのか。
戦況についてのみ答えた腹心中の腹心たる男のか細い返答を聞きながらも、しかし景勝はなんと声をかけたらいいのか分からない。
思えば、正式に主従となってからは男の機微に助けられてばかりだった。
それ故か、景勝自身は気の利いた言葉の一つさえ、ろくにかけてやることができない。
今まではそれを全て男―――兼続が示してくれたものだったが、その気をかけてやる相手が兼続本人では、それは景勝が己自身で考えるほかにない。
目の前で窮地に立たされている仲間を見捨てて、急ぎ春日山へ戻らねばならぬという今の情勢。
敵の襲来を予測し、またそれを狙っての出陣だった為に驚くような事態ではないものの、極秘の作戦であった為に、家臣たちは揃って驚き、悔しそうな…そして、悲しそうな顔をしていた。
分かっていたことだった。
家臣たちの反発も、またそれをあえて一身に受けようとした兼続の心遣いも。
それだけに、気遣いの言葉さえまともに浮かばない愚鈍な己が、憎くてならなかった。
(思えば、兼続はまだ二十歳を少し過ぎたばかり。…分かってはおったが、家老としては若すぎる)
猛将というにはいささか頼りない、どちらかといえば智将へと成長しつつある第一の家臣の背を見ながら、景勝はふと思う。
あのあぜ道で偶然出会わなければ、あるいは兼続はこのような場に身を投じることなどなかったのかもしれない。
己の寂しさ故に、半ば無理矢理のような形で連れて来られた幼少の頃の与六は、気づかれぬように毎夜の如く月を見ては泣いていた。
兼続は今でこそ主である景勝に心底家臣として尽くしてくれるようになったが、出会いさえしなければ、彼には別の未来があった筈だった。
たとえば、彼の父のように勘定奉行として、城でものの数を綿密に数え続ける、死の心配のない場で一生を終える道もあっただろう。
あのような若者の小さな肩に、人の恨みつらみや命が背負い込まれているなど―――誰が想像できるだろうか。
そう景勝に思わせてしまうくらいには、兼続の後姿は頼りなく、痛々しさを滲ませていた。
しかし、そう思い始めていた矢先に振り返り、なんでもない風な顔を覗かせるものだから、その苦々しい思いを持続させてはくれないのだ。
「さあ。殿も出立のご準備を」
「…ああ」
ああ、なんと頼りになる家臣であろうか。
その目は既に涙で赤く腫れているというのに、腫れた目はしっかりと兜の影に隠しこちらを見つめ返してくる男は、既に泣き虫と呼ばれた「与六」ではなく、家老らしい堂々たる振る舞いを見せる「兼続」なのだ。
そんな顔で見つめられては、景勝も労わりの言葉など投げてやることもできない。
「――――――織田になど、負けぬ」
ただ、己の意気込みだけを唇の上に載せると、景勝は素早く踵を返した。
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義の戦士たち、だっけな?
まとめて見てるので時間軸が色々めちゃくちゃです(笑
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