※09/06/21「D2」合わせ新刊プレビュー。
見た目殆ど男なにょたるや話です。
『――――――エージェントに任せるのが危ないなら、僕がやりますよ』
今回のミッションの舞台たるこの国は、情勢が危うい上に、国民は総じて疑り深く荒っぽい気質である。
それ故に情報統制も厳しくて、ソレスタル・ビーイングが抱える優秀なエージェントの事前調査技術をもってしても確信がもてない情報がいくつか残っていた。
それを考慮して中々次の段階に進めないでいたスメラギにそう進言したのは、アレルヤ自身だった。
危ないのよ、と念を押す彼女に大丈夫だと言い張って、今回のミッションプランを考えてもらったのだ。
少ない人員を更に減らしてしまわない為には、元々そうした荒事に慣れている人間がいけばいい。
勿論、荒事に慣れている人間というのは組織の性質上ごまんといるだろうが―――その中でも身体強化施術を施されている己は、多少の無理がきくという利点があった。
自分ならば、ある程度の装備を整えてもらえれば、大抵の事態は切り抜けられる。
勝ち負けはともかく、荒事を潜り抜けてきた回数は数え切れないほどだ。
相手が三大国家ともなれば絶対の自信はもてないかもしれないが、今回の相手は三大国家ではなく、その傘下の小国だ。
ただし、戦争支援企業を抱えている為に潤沢な資金と武器を持っている。
相手―――小国がかつて抱えていた軍組織の残党が、その武器の大半を所持したままだというのだ。
世界的戦争状態の大きなうねりにはならないだろうが、それでも無用な火種は潰しておくに限る。
それが、今回のミッションの概要だった。
(それにしても、すごい怒ってたなあ…ティエリア)
小国の軍を無力化させるにあたって、当初はヴァーチェとキュリオス…ティエリアとアレルヤの二人によるミッションが予定されていた。
アレルヤはエージェントがある程度まで収集した情報を元に拠点の所在地を特定し、そのうちの一つを破壊。
ティエリアは、アレルヤが特定した場所情報を元に、残りの拠点を破壊する。
場所はともかく、拠点の数が三つある、という事だけは特定できていて、そのうちの一つはとても規模が大きい、という事らしいのだ。
そのためにヴァーチェを使うことになっていたのだが―――何を思ったのか、計画の変更を求める声が上がった。
その声の主が、今回ティエリアに代わってミッションに参加することになったロックオンである。
彼はどういう言葉でスメラギを説き伏せたのか、さも当たり前のように「デュナメスに変更になった」と伝えてきた。
納得できる理由でも用意されていたのか、それとも彼のわがままなのか。
ティエリアが怒りながらも引き下がったあたり、予定通りではないが納得できない理由という訳でもなかったのだろう、とは思う。
しかし、最近こうしたミッション人員の変更が度々行われている。
それは、計画を進行するにあたって必要だからあえて行っていることなのか、それとも本当に急遽思い当たった理由で行っていることなのか。
アレルヤは歩きながらぼんやり考えてみたが、どれだけ考えても答えが見付からない。
もとより頭脳労働は専門外だ。
生き延びる為に多少頭も使ったが、基本的に考えることはティエリアやスメラギの仕事である。
とにかく成功すればいいんだ、と結論づけて、軽快な足取りで通りを歩く。
こうした大通りを歩く分には、他人種とはいえアレルヤも目立ちはしない。
土地柄、アレルヤのような灰色の目をした人間が多いためだろう、むしろアレルヤは街の空気に馴染んでいるようで―――道行く人がアレルヤの姿を見てものめずらしそうな顔をする、という事はなかった。
そうして、大通りをただひたすら北に向って歩いていると、ちょっとした変化に気がつく。
家族連れやビジネスマンに混じって、脇目も振らずに歩いていく男が数人、目に入ったのだ。
それは、殆どアレルヤの第六感のようなもので捉えただけのものだったが、そういった勘は得てして当たっている事が多い。
その勘が怪しいと睨んだ男たちを注意してみてみると、スーツを着ているというのにやけに浮いて見える。
背筋に棒でも通したかのようにぴんと伸びている事や歩く速度が異様に速いのもそうだが、何よりも目立つのは不自然に膨らんだ懐だ。
勿論、スケジュール帳が入っているのだ、という見方もできる。
しかし不穏な環境でばかり過ごしてきたアレルヤの感覚が、それは違うとはっきり告げていた。
(…エージェントの報告書にある場所にも近い。当たり、かな?)
男の動きを視線で追いかけながらも、足は頭に叩き込んでおいた予測ポイントを目指す。
こういった任務については素人といっても相違ないアレルヤでさえ気づく挙動の相手だ、あれが罠である可能性は否定できない。
それに、本当の食わせ者というのは尻尾をつかませないものである。
男の動きが気にはなったが、アレルヤは道から外れていったのを目の端で確認してから、そっと男から意識を逸らした。
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こんなんです。
なんかもう色々すいません…って感じでうっかり18禁にまでなってしまいました。
益々手に取りづらいオーラが増した(笑
書いてて気づきましたが、にょたるやの場合はいつものロクアレよりも、意見の対立がある分若干仲悪いかもしれません
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