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※桑取交渉後ネタ。
・二次創作(パロディ)です。
・なかのひとには興味なし。
・個人の勝手な一妄想です。
・との×かねたん(?)です
「――――――命など惜しくはない、と言ったそうじゃな」
我が殿、と呼び慕う男の静かな声音に、兼続の肩がびくりと震えた。
先ほどまで、家督争いの最中とは思えぬようなお祭り騒ぎの中にいたのだが―――元々が物静かな環境を好む気質である主君・景勝はその場に長く留まることができず、数刻を家臣たちと過ごした後、こうして自室へと戻ってきていた。
かつては数刻ですら留まることはなかったが、不器用なりに周囲への気遣いというものができるようになってきた主君は、家臣たちに笑みさえ向けていたという。
幼少の頃から仕えている兼続は、そんな景勝の変化を大いに歓迎していた。
「問うておるのだぞ、兼続。言ったのであろう?」
「…は」
桑取の者が申しておった、と補足を入れてもう一度問い直してきた主君の言葉で現実に引き戻された兼続は、喉がひりつくのを感じながらもなんとか返事をする。
確かに、主君の言う通り、己は桑取で散々痛めつけられても尚、交渉を続けようとして―――その中で、「我が命など」と口にした。
それは本心からの言葉であったし、何よりここで交渉が成功しなければ、己が命よりもはるかに大事だといえる景勝の命運が尽きると分かっていたからこそ、必死だった。
しかし、その言葉がどうしてこのように主君の不興を買っているのか、兼続にはまるで分からない。
声だけは静かだが、そのこわばった顔つきは明らかな不機嫌を表しているのだ。
景勝は普段が物静かなぶん、一度激昂すると非常に迫力がある。
いつも足が震えそうになるのを必死に堪えるのだが、幼少より「泣き虫与六」とからかわれていた程に感情が表れやすい兼続は、やはり今回も声が震えてきてしまっていた。
泣かないだけ成長が窺えるものの、恐らく主君には看破されてしまっているだろう。
「…わしは、怒っている。分かっているな、兼続」
意味も分からないまま、申し訳ございません、と口にしかけた兼続の言葉を遮って、景勝は深いため息と共にぽつりと呟く。
「わしの話をまるで聞いておらなんだ。桑取に向かわせる前に言った言葉、もう忘れたと申すか」
「殿、それは」
「――――――お前を失ってまで生き延びるつもりはない」
続けられた言葉に、兼続は息が詰まるのを感じた。
誰の言葉よりも己を励まし、奮い立たせてくれた言葉だったその一言。
そこまで頼りに思われていることを嬉しく思ったのと同時に、ならばなんとしてでも殿を生かさねば、と必死になれたのだ。
そして、その必死さが故、己の命などどうとでもなれ、という気持ちになって交渉に望めた。
結果としてそれが好転して戻ることができたのだが―――何故か、景勝はそれが不満であるらしい。
本気で分からないという顔をしていると、また一つため息をついた景勝が、憮然とした眼差しを兼続へと向けてきた。
「…殿?」
「本心で言った事を流すでない」
むっつりとした主の表情は、兼続の捉え方が間違っていたのだ、という結論を無言で示している。
主君のあの言葉はものの例えであり、激励の言葉であり、形骸に過ぎないものと捉えていたのだが…それがどうやら、いつも正直で一本気である景勝の不興を買ってしまっていたらしい。
ようやく合点がいった兼続は、畳に額がつきそうなほどに頭を下げ、非礼を詫びた。
「全く、そのように派手な怪我ばかりしおって。わしのように待つ身にもなってみよ」
「も、申し訳ございません」
丸腰で向かい、無抵抗を貫いた為についてしまった無数の怪我の跡を見て眉を顰める景勝に、兼続はただただ謝る事しかできない。
しかし、そんな兼続の様子を見てようやく腹の虫が収まったのだろう、一言二言の文句が続いただけで「もうよい」という景勝の許しを得ることができた。
「とにかく、ようやった。今宵はゆっくりと休め」
ようやくいつもの調子に戻った主君の声に少しだけ安堵するも、兼続は居心地の悪さからその顔を見ることができず、退室すべくふすまに手をかけたところでようやく景勝の表情が穏やかになっていることに気がつく。
兼続はそんな主君に困ったような笑みで応えてから、静かに退室していった。
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あまりの主従っぷりに我慢ができなかった…
そのうち、パスかけるか消します。
数が増えたらパスつきの部屋に隔離だな(笑
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