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日常風景

※何でも屋日常小話










何でも屋、と名乗ってはいるが、実際にその名で広告を出しているわけではない。
こうした社会の裏を担う仕事屋は、大抵口コミや情報屋などの仲介で依頼を受けるという方式を取っている。

以前一人で仕事をしていた当時、ロックオンは、仕事の性質上、全ての依頼を情報屋であるティエリアを経由して受けていたが―――現在では、ティエリア仲介のもの以外に、メールでの直接依頼、古い知人を経由した依頼なども受けるようになっていた。



一仕事を終えたばかりではあったが、それでも依頼はひっきりなしにやってくる。
依頼に関する直接交渉は主にロックオンの役目で、メール返信などの事務処理は専らアレルヤの役目だ。
仕事熱心なアレルヤは、仕事明けだというのに今日も熱心にメールチェックをしていた。

「どうだった?依頼は」

モーニングコーヒーと新聞を片手に、広いアレルヤの背中に声をかけると、いつもの困ったような笑みと共に、彼がくるりと振り返る。

「うーーーん…直接の依頼はなかったけど、ティエリア仲介のものが3件あったよ」

「へぇ。内容は?」

カップを傾けながら、端末をいじっているアレルヤに問いを投げかけると、含みのある回答が返ってくる。
普段あまり仲介をしてくれない(本人いわく、本来の業務から外れているらしい)ティエリアが、急に三件も仲介依頼を持ってくるだなんて。
訝しく思ってみれば、案の定、肩をすくめて「聞きたいの?」と笑われた。

「迷子の犬探しに薬物売買人の護衛、離婚調停の立会人」

―――――――なんというか、これは明らかに狙って仲介したものとしか思えない。
あの秀麗な美貌をもつ情報屋は、かなり根に持つタイプのようだ。
以前の仕事で組んだ時の恨み言をひとつずつ思い出しながら、ロックオンはため息をつく。
彼の不満も、きっとこのうちの一つくらい受ければ緩和されるだろうから―――どれを選ぶのも嫌だが、何か選ばなければ。

とりあえず俺のパソコンに転送よろしく、とやる気なさげに言うと、コーヒーを一口飲んでから新聞を畳み、今度は買ってきた雑誌に手を伸ばした。
その雑誌は本来彼が読みそうもない大衆週刊誌なのだが、こんな仕事をしていると世事に疎くなるので、彼はあえてそれを読んでいるようだ。

雑誌に集中し始めたロックオンを横目に、アレルヤの方も、今のやりとりで彼がひとつは受ける覚悟なのを確信し、思わず依頼内容をもう一度詳しく確認し始める。

薬物売買人の護衛は必然的に白兵戦・肉弾戦を得意とするアレルヤの担当になってしまうだろうから、却下。
そもそも犯罪の片棒を担ぐ筈もないのだから、反対しなくてもこれは選択肢から消えるだろうが。
離婚調停の立会人も、なんだか修羅場になってしまいそうで、命の危険とは別の方向で危険な気がするから、却下。
なんていうか、これは別に何でも屋じゃなくてもいい気がする。
そうなると、残る依頼はただ一つ。

「僕は、犬探し希望」

「……言うと思ったぜ」

雑誌に落としていた視線を少しだけ上げて、ロックオンは苦笑いを浮かべた。

恐らく、明日には「迷子の犬探し」依頼を引き受ける旨の返信をしていることだろう。
アレルヤ自身の好みもあるが、それ以前に他に選択肢がないことを分かっていたアレルヤは、同じように苦笑いを浮かべて端末に浮かんでいたウィンドウを閉じた。









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没データをサルベージ(笑)

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