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ガンスリパロ3

※GUNSLINGER GIRLパロその3。
ライルとロックオン(ニール)の話
これまでの話はMAINのパラレルカテゴリ「ガンスリパロ」にまとめました









「――――――弟がいるそうだな?」

「…え?」

たまたま、野暮用があって後方支援部門に顔を出したら、このメンツの中では一番の新参である…しかし最高責任者たるスメラギの旧知の人物ということもあって異様に発言力の大きいカティ・マネキンが、開口一番そう尋ねてきた。
一瞬それがアレルヤのことを皮肉って言っただけなのか、それとも本当の「弟」のことを言ったのかがわからなくて、ロックオンは目を白黒させる。

「ライル・ディランディといったか?兄弟揃って公社に勤めているそうじゃないか」

「ああ…そのことですか。あいつは情報収集が主な任務だから、滅多にここには戻ってきませんよ」

「そのライルが、今度は義体担当官候補としてここに来るらしいぞ」

ほら、と手にしていた書面を見せてくるカティの言葉に、ロックオンは僅かに吃驚した。

弟―――ライルは、この公社に勤めてこそいるが、義体には興味が薄く、義体担当官候補として名を連ねながらも義体探しをしようとせず、後方支援部門の末端ともいうべき情報収集という任務を長くこなしていた。
どんな情報網を持っているのか、彼の持ってくる情報はいずれも最新かつ確実だったものだから、それで公社
の力になってきた彼が―――いったいどんな心変わりをしたのか。
驚き過ぎてしまって、ロックオンはただ「そうですか」と答えることしかできなかった。










――――――義体への興味が薄かったライルには、やはりというか何というか、まずは義体に対する知識をという決定が下され、その教育役に何故かロックオンが抜擢された。
こういう場ではむしろ親兄弟をあてがうことは避けるべきなのではないだろうか、とスメラギに進言はしてみたのだが―――あなたたちが一番適任なのよ、と返されてしまった。

「ライルさん、ですか。やっぱり、よく似ているんですよね?」

「そりゃあ、双子だからな」

ライルが待っているという公社出入り口を目指して歩きながら、傍らのアレルヤが無邪気に質問をしてくる。
今日はラフなシャツにジーンズという軽装だが、不自然に膨らんだジャケットの隙間からは、風になびくたびに革製のホルダーがちらりと見えていた。
武器は必要ない、といったのだが、持っていないと落ち着かない、と珍しく駄々をこねられてしまったのだ。
滅多にわがままを言わないアレルヤの言葉に弱いロックオンは、今回だけだぞ、と念を押して武器の携帯を許可した。

アレルヤが持ち出したのは、彼が最も長く愛用しているSIG。
難易度が高い仕事の時や心に不安を抱えている時に、彼は好んでSIGを持ち出したがる。
ということは、アレルヤはライルに会うことに不安を抱いているのだろう。

(…かくいう俺も、少しばかり気になっているんだけどな)

前に会ったときも、相変わらずライルは義体に対しては懐疑的で、とてもじゃないが義体の担当官になろうなんていう気概は感じられなかった。
どういう経緯で担当官になる旨を了承したのか―――今日は、それだけでも聞いてみたい。
門に寄りかかってたばこをふかしている男の姿を遠目に確認したロックオンは、よし、と心の中で掛声をかけて、歩み寄る足を速めた。



「久しぶり」

片手をあげながら軽く挨拶をしてきたライルに、まずはアレルヤが目を丸くする。

「…本当に同じ顔だ」

「″双子"だからな」

アレルヤの言葉を正確に拾ったライルは、やや突っかかるような物言いで笑みを向けた。
その棘のある態度に、ロックオンは思わずアレルヤを背に庇う。

「――――――俺は、お前に義体についての簡単な講義をするよう言われている。まず、何から知りたい?」

「…そうだな。それじゃあ、今いる義体について」

とりあえず公社の敷地内へ彼を案内しながら、ロックオンは弟の問いに簡単に答えた。

「まずは、俺が担当しているアレルヤ。基本的には近接戦闘や護衛の任務に就いている」

いずれも高い身体能力を備えているとはいえ、性格や適正から、義体たちにはそれぞれ得意分野があった。

アレルヤは近接戦闘を得意としているため、護衛や人質救出任務などに就くことが多い。
同じく近接戦闘を得意とする義体で刹那という子供もいるが、彼は完全に戦闘破壊任務が専門で、どちらかといえば護衛向きであるアレルヤとは少し分野が異なっている。
それ以外には、遠距離からの援護を得意とするティエリア、担当官が不慮の事故で亡くなりながらも身体実験用として公社に住み続けているマリナなど、数人の義体がこの公社には存在している。

それをすべて説明したが、ライルはなぜか不快げに眉を寄せて、特にこれといったコメントも返さなかった。

「あとは、そうだな――――」

言い忘れていた事がないかを頭の中で整理していたロックオンの横で、唐突にライルが手を動かす。
ロックオンがその挙動に気づいてはっとしたときには、ライルの手にあった煙草がロックオンの眼前まで迫っていた。

「ッ―――・・・なるほど、ね。」

「・・・ふざけるのも程々にしておけよ。本当に撃ちかねない」

結局、はぁ、と深いため息をついているロックオンに煙草が到達することはなかった。
ライルの挙動に気づいたアレルヤが、とっさに指先で掠め取ったからだ。
その上、煙草の回収と同時に胸元から出したSIGを、彼はまっすぐにライルへと向けている。

「――――――担当官の生命保護を最優先にしているんだ。これからはこういう行動は慎めよ」

冷たく言い放ったが、しかしそれでも、どこか皮肉が込められているようなライルの笑みが消えうせることはなかった。
さすがのロックオンも、弟の異常を察知して眉を顰める。

「……ライル?どうしたんだ」

「聞いたか?兄さん。俺の義体がどんな奴か」

口元に浮かんだ形ばかりの笑みは、ロックオン―――兄であるニールと瓜二つだ。
しかし、その中に潜む暗い感情の色が、ロックオンの浮かべる同種の笑みよりも濃い。
そうなった要因の一つとして、何でもそつなくこなせて要領よく生きてきた兄に比べて自分が劣っている、という劣等感があるのだが、この年齢になっても兄弟間でこの溝が埋まったことは一度たりともなかった。
そして、この溝は、義体担当官になるとライルが決めた瞬間から、更に深くなっていたのである。

「いや、まだだ」

ロックオンが短く応えると、すぐにライルは小さく畳んだ紙をロックオンへと差し出してきた。
広げてみれば、それは義体の身元情報で―――ロックオンは、写真を見た瞬間に凍りつく。

「ライル――――――…これは」

「そうだよ。あんたが見捨てた方のガキだ。あんたがアレルヤを可愛がっている間もずっと、近くの病院で隔離されていたよ」

怒りの滲んだ笑みで、ライルは一句一句を突きつけるように言い放った。

滑り落ちそうになっているその紙には、アレルヤと全く同じ顔の―――そして、アレルヤとは名前も印象も違う少年の写真が掲載されている。
名の部分にハレルヤ、と記されている彼は、アレルヤがかつていたという製薬研究施設にいた実験台の少年の一人だった。

ライルの言う通り、そこには元々二人の実験台がいて、当時は発足したばかりだった公社の予算や担当官数の関係上、ロックオンは一人しか引き取ることができなかったのだ。
いずれは適任の担当官を探して引き取ろう、と思っていたものの、しかし仕事のあまりの忙しさに、先延ばしになっていた感は確かにあった。
しかし、それがライルの目には見捨てられた子どもとして映ってしまったのだろう。
実際、その通りだと言われてみれば納得できる。
特に、同じ双子であるライルは思うところがあったのかもしれない。
ロックオンでさえ、どちらかだけ、と言われて非常に迷ったのだ。

しかし、片方を選んで、もう片方をいつまでもそのままにしておいたことが、ただでさえ距離の遠い弟を、更に遠ざけてしまったのならば―――自分があの時アレルヤを選んだことは、間違っていたのかもしれない。
一瞬そうは思ったものの、急に怒り出したライルを見て、怯えながらもロックオンを守ろうと前に出てくる小さな少年の姿を見てしまうと、やはりあの時に引き取りを断念する、という選択はできなかったはずだ、と思い直す。
その思考の推移すら、きっと弟にとっては苛立ちの元になっているのだろう。
彼の激情が収まる気配は、全く見えなかった。

「言っておくが、俺はあくまで諜報部だから、兄さん達と同じような扱い方はしない。俺なりのやり方でやらせてもらうぜ」

そうはき捨てると、ライルはそのまま公社の敷地の外に向かって歩いていってしまう。
ロックオンはその背中になんと声をかけていいのか分からず、結局何も言わないまま、その背中を見送ることしかできなかった。










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前々から検討はしていましたが、犬アレと同じようにライルとハレルヤコンビ。
実は好きなんだよ…!余り物?とか捏造?とか言われてもすきなんだよライルとハレルヤの組み合わせ!

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