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※リボーンのツナ骸(十年後日常妄想)です。
サイト小話「惚れた弱み」と繋がってます。
『ちょっと、頼まれてくれないかな』
そう言ってドン・ボンゴレがよく滞在している別邸に呼び出されたのは、一週間ほど前のことだ。
市街地から少しだけ離れた場所にあるこの別邸は、美しい中庭が特徴の古い邸宅である。
どこに向かうにしても利便性の良い立地であるため、綱吉はここに滞在していることが多かった。
本部は建物が大きすぎて落ち着かない、とため息をつく今のドン・ボンゴレは、半分以上が日本人の血という異色のボスである。
その彼は、別邸の中でも特に大きな書斎部屋にある執務机に陣取って、ドアの近くに立つ骸に微笑みかけていた。
マフィア界でも屈指の大ファミリーのボスとは思えないほどに穏やかな物腰の青年―――名を、沢田綱吉。
彼が、不本意ではあるが契約上の骸の上司である。
まだボス候補に過ぎなかった彼の少年時代に、条件つきで彼の『守護者』の役目を引き受けたのが全ての始まりだった。
気弱な子供だった頃から彼を知っている身としては、現在の彼の姿を見ていると少し複雑な気分になる。
今の彼は骸を追い越すほどの身長と歴代ボスが愛用してきたという重厚な執務机に見劣りしない、威厳に満ちた面立ちを得ていた。
『ある街に行ってもらいたいんだ。詳しい内容はこの紙に書いた』
『…』
無言で紙を受け取ると、そこにはつたないイタリア語ではなく、日本語で詳細が書かれていた。
現在、紙で情報をやりとりするという手法は前時代的とされ一般社会では少なくなり始めているところなのだが―――電子媒体で残したくない場合や電子媒体にできない環境にある人間は、まだまだこの紙による情報伝達に頼っている。
マフィア界に関して言えば、電子媒体に変換することができないというよりも、内容によってはあえて紙媒体で情報をやりとりすることがあった。
儀式的な意味もあるこれを全時代的だと骸はいつもあざけっているが、このアナログ具合は実のところ嫌いではない。
『――――――何故、と聞いてもいいですか?』
読み終えるなりどこからともなく取り出したライターで書類に火をつけると、骸は当然のようにそれを近くのゴミ箱に投げ入れた。
防火処理が施されているゴミ箱の中でしばらくは煙と炎を噴出していた紙は、程なく燃え尽きて灰になる。
書いてあったのは、向かうべき地名とやるべき仕事。
つまり、指令書の類だ。
紙媒体で情報をやりとりするということは、こうして「紙」さえどうにかしてしまえば、情報は残らないのだ。
骸は、燃やした指令書に記載されていた内容を改めて頭の中で整理しつつも、解せないものを感じていた。
書いてあったのは、所謂非合法ドラッグの売買に携わる組織の摘発と撲滅をせよというものである。
ファミリーの方針にもよるが、仮にこれを推進するファミリーである場合、自分の認可しない集団が売買行為を行ったら即座に制裁行動に出るし、そもそもこれを推進しないファミリーである場合(現在のボンゴレはこの立場である)、組織そのものの根絶を目指すものである。
しかしながら、そもそもの問題点がこの命令にはあった。
組織があると思われる拠点が、明らかにボンゴレファミリーの管理地域外なのだ。
『これは明らかにボンゴレの管轄外ですね。ボンゴレともあろう貴方が、自ら掟を破るんですか?』
『ああ、それについては相手と取引済み。この件に関して管轄ファミリーから横槍が入ることはないから、安心して』
機嫌よく笑いながら、彼は根回しが完璧であると補足した。
『本当はオレがやりたいところなんだけど、皆に止められちゃってさ。しかも今手が空いてるのお前だけなんだ』
遠まわしに消去法で骸に決まったのだといわれて少々苛立ったが、この程度のことで声を荒げていては話も続かない。
気を落ち着けてから、骸は改めて疑問をぶつけた。
『…意図が分かりませんね。なぜ、このような小さな問題をボンゴレが扱わなければいけないのか』
『――――――前、バラを贈ったのを覚えてる?』
『……先日の、ですか?ええ。綺麗は綺麗でしたが、ずいぶん形がばらばらでしたね』
言いながら、骸は先日の綱吉の贈り物を思い出していた。
いつからかは忘れたが、綱吉と骸が仲違いをした後には綱吉から花束が贈られるのが通例になっていた。
よくも悪くも日本人気質の抜けきらない彼らしからぬ、気障なやり口だ。
きっと誰かの入れ知恵なのだろうが、その花束を渡す時の照れてるのか怒ってるのかよく分からない綱吉の表情を見ていると、些細なことで腹を立てていた己が馬鹿らしくなってくるのだから不思議なものだ。
それに、花に罪はない。
もらった花をクロームにやれば、贈り物を無邪気に喜び綺麗に飾っておいてくれる。
季節によって贈られる花はさまざまだが、一番多いのがバラだった。
店員が勝手にセレクトしているのか、それともたまたま行くたびに似たような色しかないのか、色は赤系であることが多い。
そしてその花は、先日に限りいつもの美しい包装紙ではなく簡素な新聞紙だった。
後で「いつもの店に寄る余裕がなかった」と言い訳をしていたが、それがどうしたというのだろう。
『摘発を頼んだ一件の交渉代理人リストにね、何故かその花屋の子が入っているんだ』
『…これを買ったのは貧民層の店だったんですか』
ふと、思ったままの疑問を口にした。
えてして、危険な「仕事」に手を出そうとする一般民というのは貧困層なのだ。
理由は単純明快。危険だが、その代わりに簡単に金が手に入るからである。
したがって、こういった類の仕事をしている一般民というのは、生活の糧として、危険であることを重々承知した上で手を出しているのだ。
それを問うと、綱吉は骸の考えを緩やかに否定する。
『いや、オレが見た感じでは違う。出店だったけど、ちゃんとしたお店だったから…貧困層じゃないと思うんだ』
言葉尻が僅かに自信なさげだったから、おそらく彼自身にも確証はないのだろう。
それもそうだ。管轄外の、それも通りがかりで買い物をしただけの店を経営する人間の裏事情を知ることができる筈もない。
直感力に優れているとはいえ、彼は心が読める超能力者などではなく、ただの人間なのだから。
『まあ、それは置いておくとしましょう。で?何故この件に手を出すと言い出したんですか』
『実はさ、オレ、あの花束を買ってすぐに転んじゃったんだ』
『……情けない』
『うん、まあオレもそう思ったけどさ。とにかくその時に何本か折れちゃって…折れた分をその子がサービスしてくれたんだよ』
まあ、正確には彼女のお父さんが、だけど。
そう補足しながら、彼は腕をゆっくりと組みなおしてみせる。
そうして改めて骸を見上げたときには、彼は既に道端で躓いて転んだと情けない体験談を語る【ダメツナ】ではなく、【ドン・ボンゴレ】の顔をしていた。
『本当に貧困層の人間で、本人が納得してこの仕事に手を出しているのなら…オレに止める権利はないよ。だけど、そうじゃなかったら助けたい』
『それが返礼のつもりだと言いたいんですね』
確信をもちながらもあえて確認すると、綱吉はしっかりと頷いてみせた。
ことごとく骸のマフィア観と違う行動を起こそうとする綱吉は、ある意味での天才なのかもしれない。
マフィアの人間としては、いささか能天気過ぎる微笑を横目に骸がため息をついたのは、仕方のないことだろう。
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結構長ったらしくなりました…予想よりページ数増えてびっくりしてます(笑)
意外に仲良し?なつなむくになってます
大体サイトの雰囲気と変わらない中身で普通に骸がお仕事してたりツナがツナ様だったりします。
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