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※激短ですがためし書き。
夏~秋に出すかもしれない?合同誌のネタ。
探偵アレルヤ&助手ニール
イモくささ全開のほのぼのコメディみたいなそういう話を予定してます
『拝啓、ハレルヤさま。
今年もようやく種イモの季節がやってきたみたいで、僕はとてもうれしいよ。
またベランダでジャガイモを作るから、いいものができたら君にも送るね。
いつもロックオンはジャガイモを使うときに身をつぶしてしまうから、今年はメークインじゃなくて男爵に変えたんだ。
これで、ロックオンも少しは料理がしやすくなるんじゃないかな?
僕はあまり品種を気にしたことがないんだけど、彼が言うには、メークインは崩れにくいらしいんだ。
ハレルヤ、知っていたかい?
あと、君がいう「メール」って、もしかしてこの手紙のこと?
いつも返信をくれないのは、「アドレス」…住所が分からないってことなのかな。
住所ならいつも手紙の裏に住所を書いているじゃないか。
じゃあ、返信待っています。
アレルヤより』
にぎやかな通りの一角にある古びたアパートの一室に、「彼」の居城はあった。
一般住居らしい表札が並ぶ中、二階の一番奥の扉の入り口には、彼の事務所であることを示す探偵事務所の看板が、少し傾いた状態でかけられている。
良く言えば趣のある、悪く言えばボロボロの―――所謂築年数の長いこの「カーサ・イオリア」は、一般居住者に混じって、彼…アレルヤのような個人事業主の事務所がひしめいていた。
ただし、彼は現代の探偵稼業の手法とは真逆を行く、いまどきアナログもいいところと言わざるを得ない手法を取る、ある意味ではとても珍しい探偵だった。
そのアナログさのものめずらしさと探偵本人の人間性のせいか、大事件や大きな仕事こそないが、不思議と街の困りごとに関してはそこいらの探偵よりもよく仕事が舞い込む。
だから、決して「全く繁盛していない」というわけではない。
しかしながら、その一件一件の単価が低い為に、この探偵事務所は常に自転車操業のような形だった。
それ故に、食費の足しになれば、と事務所の主であるアレルヤはベランダでジャガイモ栽培を始めたし、アレルヤの助手であるロックオンなどは、アレルヤには言わずに他で仕事をしていたりもする。
ロックオンからすれば趣味に近い仕事だし、アレルヤ自身も全く生活できないというわけでもないので、今の状態で満足のようだった。
彼にすれば、自身の実入りよりも、少し離れたところで同じ仕事をしている己の弟の動向の方が気になる、というのが正直なところだ。
相棒の探偵とうまくいっているのか…それだけが気がかりなのだ。
だから、こうしてマメに手紙を送っているのだが、今まで一度も返信がきたことはない。
ため息混じりにポストに手紙を入れに外に出て、帰りがてらにアパートの入り口にある事務所の名が書いてあるポストを開けてみたものの、やはり今日も、返信はきていないようだった。
「…ほんと、今何してるんだろうなあ、ハレルヤ」
つぶやきながら、いかにも普通のポストと同じようにアレルヤはポストの蓋を閉めた。
錆びがまわっている為にいびつな形に曲がり、その上開けるたびにゆがんだ音を立てるそのポストを、こうして片手で開けることができるのは、このアパートでは実はアレルヤ一人である。
ロックオンがこれを開けるときは、両手で、渾身の力を込めなければぴくりとも動かないという事実を、探偵という職業にしてはあまりにも体力に恵まれすぎているこの青年は、未だに知らなかった。
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