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※スパコミ新刊(ライハレ)プレビュー。
本文中直接描写はないですが、ロク←アレを匂わせる記述あり(プレビューにはありません)。
「――――お疲れ」
「あ、お疲れ様です」
格納庫に足を踏み入れると、支援とはいえ自身も出撃したというのに、そのまま機体調整の為に格納庫に居残っていた沙慈・クロスロードに出くわす。
傍らの端末には赤のハロが張り付いていて、その口からは接続端子が何本か見えていた。
そのうちの何本かは端末に、残りはオーライザーのコックピットに延びている。
「お前は休まないのか?」
「先ほど仮眠を取ったところなんです。いつ戦いになるか分からないから…機体は万全にしておきたくて」
「…ま、頑張りすぎるなよ」
はい、という素直な返事を背に受けながら、ロックオンはシミュレータの所へと降り立った。
自機であるケルディムが格納されているのはここではないのだが、シミュレータはトレミー内の四格納庫の中で一番区画が広いダブルオー及びオーライザーのドッグとして利用されている、この第一格納庫に配置されている。
主だった機器がそろっているのもここなので、修理の内容によってはダブルオーではなく他の機体が格納されていることもある。
以前アリオスが損傷した際は、確かアリオスは本来の格納場所である第三格納庫ではなく、ここに格納されたのだ。
そして先の戦闘ではケルディムが手ひどい損害を受けたので、ロックオンは当初ここでの修理になるかもしれない、と思っていた。
しかし損傷の酷さは外見だけのことだったらしく、従来の格納場所である第二格納庫で修繕が行われた。
しかし、外見だけとはいえ、その損傷状態は凄まじいもので―――多数いるハロの殆どが作業に当たっている今も、アーム部の肘から先と脚部にかけてのパーツが丸ごとない状態である。
自立していられない機体は、現在ドッグの固定アームに支えられ、どうにか直立状態を保っていた。
後方支援機があるなしでは戦局も作戦展開も変わってくる。
一秒でも早い修復が求められている今、多忙を極める第二格納庫には、ロックオンでさえ未だに近づけない状態だった。
ともあれ、マイスターであるロックオンに、現状で手伝えることは何もない。
しかし、だからといって自室でゆっくりしていられるような精神状態でもなかった為、こうしてシミュレータのところへやって来たのだ。
(――――――記録は…残ってない、か)
実機で頻繁に戦うようになってからは、ロックオンも滅多に使わなくなったシミュレータには、当たり前だがその当時の記録しか残っていない。
そこには、ロックオンを含めた四人の記録。
それに加えて、アレルヤの名で記録された、もう一人のアレルヤ―――ハレルヤの記録が残っている。
多少は新しいものが上書きされているかもしれない、と期待して覗いてみたのだが、それは徒労に終わったようだ。
最近のロックオンは、こうして時間を見つけては戦闘記録を眺めるのを習慣にしていた。
それというのも、戦闘が過酷になるにつれて、ハレルヤと会える確率が低くなってきたからである。
それまでは、忙しいながらにハレルヤは定期的にシミュレータで遊んでいたようなので、時折、アレルヤとは思えないような戦闘記録がいくつか残っていた。
メッセージも何も残さないし、行動していた痕跡さえ、このシミュレータの記録以外には何もない。
監視カメラの映像くらいになら残っているかもしれないが、そんなものでは意味がなかった。
ただ、ロックオンは彼の姿を見たいというのではなく、彼の行動の痕跡を自分の目で見つけたいだけなのだ。
「なんだ、今更シミュレータか?」
「…ん?いや、記録を見ていただけだ」
早速ロックオンの姿に気づいたイアンが作業の手を止めて冷やかしの声をかけたけれど、ロックオンはそれをあっさりとかわす。
「それよりも、ケルディムはあとどれくらいで動かせるようになる?」
「ああ、あと二時間ってところだな。どれか一機でも作業が終わってくれれば、その分だけ他機の作業も早く終わるんだが」
「…、そりゃ無理な相談だな」
何せ、戦力は拮抗どころか常に不利な状態である。
損傷しない時などほとんどないし、戦闘要員がたった四人、サポートや補助戦闘要員を含めても二桁に届かない現状では、動かす人間側の消耗も激しい。
前回の損傷とて、決して自分たちが劣っていただとか、全力を尽くしていなかったという訳ではないのだ。
むしろ、毎回死力を尽くしている。それで、あの損傷レベルなのだ。
それぞれ最低限戦える程度の損傷レベルで帰ってこれるだけすばらしいことではあるのだが、少数精鋭である分、一人一人の損耗が激しいとその分より不利になるのも事実だった。
しかし、自分たちが動かなければどうしようもないのだ。
仮にどこにも味方がいなくとも、絶対的に不利な状況だとしても、ロックオン達は戦わない訳にはいかない。
仮に戦いを好ましく思っていなくとも、だ。
「お前さんも格納庫なんかに顔出してないで、きっちり休んだらどうだ?刹那やアレルヤはもう部屋に戻っとるぞ」
「ああ、そうするよ。邪魔して悪かったな」
来て早々に追い返されてしまった。
もとより、記録を見ても意味がなかったので、早々に去るつもりではあったのだが。
苦笑しつつ、ロックオンは出入り口へと足を向ける。
相変わらずオーライザーの傍には赤ハロと沙慈が貼り付いているが、既に作業に集中しているのか、沙慈はロックオンが傍を通り過ぎたことにはまったく気づいておらず、ハロの方も一瞬ロックオンへと顔を向けたが、集中している彼に気を遣ったのだろう、すぐに端末の方へと向き直ってしまった。
邪魔をしてはいけないだろう。
赤ハロと同じ判断をしたロックオンも、彼には声をかけず、そのまま静かに格納庫を後にした。
(…そうか、俺の相棒も戻ってくるのは二時間後、ってことか)
今、ロックオンの相棒であるオレンジハロは整備に駆り出されていた。
『彼』は機体のシステムそのものに関わるような大きな損傷については無理のようだが、外装の修繕程度なら単機でやってのける有能なサポートAIだ。
他のハロを指揮しつつ作業を進める姿は、最初人間による整備風景に慣れていたロックオンには少々異質に映っていたが、今ではむしろこちらの方が馴染みの光景になりつつある。
今も急ピッチで『イソゲ イソゲ』などと叫んでいるに違いない。
ハロと組むようになってそれほど経った訳ではないのだが、この短い間ですっかりハロの性格らしきものを把握してしまった。
手に取るように分かる相棒の行動を思い起こしながら、ロックオンは廊下を進んでいく。
少し、第二格納庫を覗きたくなったが、沙慈や赤ハロ同様、彼らの集中力と作業の邪魔になってはいけない。
第二格納庫へと続くブロックの開閉ボタンを前に少し考えたが、すぐにあきらめた。
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こんなんなりましたー。
さりげに序盤はハロ描写が多くなってしまった(笑
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