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【T&B】兎虎突発本

※T&B突発コピ本サンプルです。コンビ要素のが強い









現場は当初ハイウェイと言われていたのだが、途中で犯人が車両を捨て狭い路地の多い地域に逃げ込んだというので、途中で道を変えて現場へと向かった。

現場には既に小回りの利く専用車両をもつファイヤーエンブレムと移動手段を必要としないスカイハイが到着していた。
ブルーローズの専用車両はステージも兼ねているのだが今回の現場には不適切と判断されたようで、別車両でこちらへ向かっているという。
常に様々な場所に張り巡らされているテレビの中継車は早くも街の比較的広い通りに配置されており、いつものスタッフが中継の準備を始めていた。
本格的な行動開始はカメラが回り始めてから、と理解しているヒーローの面々は、警戒こそしているがいずれも行動を開始してはいない。

『相手は武器の密輸をしていたようね。乗り捨てた車両からは大量の銃と爆弾が発見されたわ』

「おいおい、それじゃあ」

『…そうね。恐らく、武器の一部を持って逃げているでしょう』

「!そういう事は早く言えッ」

インカム越しに怒鳴って、虎徹は急に走り出した。
雰囲気で先走った行動に出たことを察したのだろう、聞こえてくる番組プロデューサー・アニエスの声は明らかに慌てている。

『ちょっと待ちなさい!タイガー!!』

「おじさん、まだ中継は始まってませんよ」

「んなもん待ってられっか!お前はそこで指くわえて見てろ!」

バーナビーと話している間にどうにかスタッフの準備が整ったのか、中継は虎徹が走っている途中で開始される。
最悪のタイミングで映ってしまったことにアニエスの重いため息が聞こえてきそうだ。





(全く…本当に彼はベテランなのか?)

あまりにも短絡的過ぎて、何度過ぎったか分からない感想を抱きながら、虎徹の背を追う。
カメラに映されていることを意識していないとしか思えないランニングフォームはお世辞にも美しいとはいえないが、彼の行動自体は、市民の早期安全確保の観点からすれば正しい。
「何」を第一とするかによって、虎徹の行動は判断の分かれるものだということは、バーナビーにも分かっていた。 

(―――――でも、これはあくまでビジネスだ)

視界に入ったスポンサー企業のロゴで、バーナビーは思考を引き戻す。
自分達にはスポンサーがいて、そして立場上、視聴者を満足させる「活躍」をする必要がある。
ヒーローとしての行動はポイント化されており、その数字をいかに稼ぐかによって「優秀なヒーロー」であるか否かが判断される。

そして虎徹は―――ワイルドタイガーは、ポイントを稼げない、この判断基準で言えば最も劣ったヒーロー、ということだ。
それは実際正しく、概ね彼の行動はビジネスとしてのヒーローをやりきれていない。

「おじさん!何も考えずに突っ込まないでください」

「あ?」

「前方に移動する複数の熱源反応があります。状況から見て犯人集団でしょう」

金属反応もあり、その大きさからも犯人と思われることを告げると、ようやく虎徹も走るのを止めてスーツのスキャン機能を使い始める。
先日ようやく使い方を覚えたというだけあって、指先の動きは以前より滑らかだ。

「―――――おい、方向が…」

「…まだ避難指示が出ていない地域に向かっていますね」

ああ、くそ!という悪態が聞こえてきたかと思うと、やはり彼は走り出していた。
多少肩が上下しているが、スーツを着ていても未だに走るスピードが落ちていない。
普段バーナビーよりトレーニングを怠っているとは思えないようなスタミナだ。

「前!」

「わーってるよ!」

「分かってるなら止―――」

やがて追いついた犯人集団がいると思われる方向に忠告を無視して突っ込んだ虎徹は、案の定待ち伏せていた犯人グループの一部から集中砲火を浴びた。
一斉攻撃を受けた虎徹はといえば、無様に倒れているかと思いきや、スーツの強度を頼りにそのまま撃った犯人達の所へと突っ込んでいる。
仕方なく彼に倣ってその場に駆け寄るが、一通り武器をへし折った虎徹は更に奥へと向かおうとしていた。

「どこ行くんですか」

「どこって、残りの奴らを追っかけんだよ」

「それも重要ですが、こっちも捕縛しなければポイントになりませんよ」

「あーそう。じゃ、任せた」

あっさりとそう言ってのけると、虎徹は返事も待たずに走り出した。
能力はまだ発動していないので、いざとなれば彼も自分で何とかするのだろうが―――仕事上、彼にヘマをされると自分の印象や評判にも関わる。
少し考えた後、こちらのポイントは諦め、気絶している数名を簡単に捕縛してから、バーナビーも走り出した。

(本当に、自分勝手なおじさんだ…!)

バイクが使えたらそのままタイヤでひき潰してやりたい所だが、生憎と単機でもこの路地は走れそうにない。
その上スーツのせいで並んで走ろうにも走れず、無鉄砲な虎徹の背後を追いかける事しかできないでいた。

(真っ先にやられるタイプだな…間違いなく)

現状を冷静に分析しながら、その「真っ先にやられるタイプ」に追従している自分も、恐らく彼の行動にずっと振り回されていれば、「真っ先にやられるタイプの彼」の次くらいにやられるだろう、と考える。

今回は武装レベルからして相当なヘマをしない限り死ぬ事はないだろうが、いつもそうとは限らない。
中には、もっと強力な武器でもって抵抗してくる犯人もいるだろう。人質なんていう手段もあるかもしれない。
それに、今回だって多少なりとも不利な状況なのだ。
道が入り組んでいる上に建物も乱立している為上空からの確認も難しく、空中戦を得意とするスカイハイと走り続けるほど体力のないブルーローズは後方支援に徹している。
その為、この地域に入っているヒーローは全員ではない。
ある程度の位置は把握してるが、自分達の近くにいないことは確認済み。
とどのつまり、「何か不測の事態」があった場合、自分達だけで対処しなければならないということだ。

「…おっと!」

「!」

「……なー、バニーちゃんよ。あれ、なんだ?」

急に止まったかと思うと、虎徹はぎぎぎ、と音がしそうな不自然さで振り返り、前方を指差す。
バーナビーです、と訂正することも忘れて彼の指すものを確認してみれば、中々に危険なラインナップが揃っていた


「アサルトライフルにグレネードランチャー…ああ、手榴弾も持ってるみたいですね」

「暢気に分析すんな!なあ、あれ、全部使われたらどうなる」

「当然、この一帯が平地になるでしょうね。」

求められた答えを返すと、虎徹が息を飲んだ。
スーツ姿なので実際には確認できていないが、彼の性格からして間違いない。そのくらいのことは、フェイスカバーを取らなくても分かる。

「どうするんです、おじさん」

「勿論―――…こうするんだよッ!」

言って、虎徹は能力発動を待たずに駆け出した。









He who hesitates is lost.
(ためらう者は負け)

++++++++++++++++++++++++++++++
↑がタイトル。
最初はもうちょいアンニュイで動きのない話だったはずなんですが、うっかり手が滑ったので急遽タイトル変更。
コンビはあはあ…
虎も兎も好きですけど斎藤さんも超好きです…きもくて好き。あの笑いがたまらぬぇー

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