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※プリ雨、イタリアで再会しちゃいました編
雨月がプリーモおっかけてイタリアまで来ちゃいました話。
「―――――」
それまでジョットを囲んでいた敵対ファミリーの男たちが、揃って息を飲むのが分かった。
曇天の中、揃いも揃って黒い服をまとっているせいか、こんな狭い通りにひしめき合っていると気分からして息苦しい。
しかしその代わりに、距離が近いので相手の息遣いまでよく分かる。
表情は勿論、視線の動きや感情の流れさえ、手に取るように分かってしまうのだ。
彼らの視線を一身に集めているのは、ジョットの盾になるような位置で仁王立ちをする、一人の青年である。
服装こそマフィアの中に紛れてもおかしくない黒のスーツ姿だが、その凛とした後姿には見覚えがあった。
右手には一般的な剣よりも更に長い長剣、もう片方の手には投剣らしいものが握られている。
ただ、それは西洋のものとは若干形状が違っているもので、名称としては剣ではなく「刀」と呼ぶものだ。
剣と呼んで窘められた記憶を掘り起こしながら、ジョットはその後姿をじっと見つめた。
「……雨月か?」
尋ねると、ようやく男が振り返る。
烏帽子を被るためにまとめやすい程度に伸ばされていた髪は今ではジョットよりも短く切りそろえられて、まるで別人のようだったが―――男は確かに、友人である朝利雨月だった。
「久しいな」
「…久しいも何も、別れたのはほんの一ヶ月前だ」
髪型が違うせいか、まるで別人のように見える雨月だったが、しかしジョットを見つめるその静かな眼差しは少しも変わっていない。
その瞳がじっと友人の姿を捉えていたかと思うと、物憂げに伏せられた。
「桜が見たいと言っていたのに、桜が咲かないうちにお前は消えた。せっかく用意させた肴も台無しだ」
「話した筈だ。俺が今巻き込まれている抗争は、小競り合いとは訳が違う。守る場所があるお前がついて来るべきじゃないと」
「街の平穏が保たれるのなら朝利の者でなくとも構わない。」
問答をしているうちに、敵対ファミリーは雨月をジョットの仲間と認識したのだろう、喚声と共に攻撃が再開される。
思い思いの武器を手にした彼らは、恐らく雨月の剣を見て嘲り笑っていることだろう。
今はもう、飛び道具の時代だ。
拳だの剣だのといった近接武器は、銃に取って代わられている。
銃が効かなかった時、銃が使えないときにのみようやく使うという程度の武器しか持たない矮小なファミリーの二人組は、今の人数なら簡単に潰せる筈だ。
そう思っての一斉攻撃は、しかし先頭にいた雨月の一閃で簡単に封じられてしまった。
正確に言えば、一閃で発生した風圧で、人がたたらを踏んでしまったのだ。
大半が銃身が安定していないハンドガンを使用している為、足元が覚束なければ正確に狙い撃つことができなくなる。
雨月が行ったのは、狙いが外れた銃弾で己に向ってきたいくつかを叩き落すことだけだった。
剣の一振りが圧力を持つだなんて、西洋ではありえない話だが―――東洋の剣術で、しかも雨月ほどの使い手になると、話が違ってくる。
「ジョット、私は「ただの朝利雨月」としてここに来た。友人を助けたいだけだという私を追い帰す気か?」
言いながら、近くまでやってきていた一人を切り伏せた。
流れるような自然な動きは、無駄なく相手をいなし、そのついでのように、しかし確実に倒す。
「――――――後悔するぞ」
「友人の危機を救えぬ方が、私にとって悔いになる」
散々言ったことだというのに、雨月はそれでも決心を変えなかったらしい。
半ば本気で叩きのめして日本に置いてきたというのに、物腰だけは静かなこの男は、それでは懲りずにやってきてしまったというのだ。
散々言い聞かせた挙句、本気で倒したというのにそれでもやって来たということは、恐らく彼も相当の覚悟で来たのだろう。
(…そこまでの覚悟があるなら、俺はもう止めまい)
ふう、と息を吐くと、思考を切り替えた。
もう雨月はイタリアに来て、しかもジョットを、ボンゴレのボスを庇ってしまったのだ。
これはもう既成事実としてあっという間に広がってしまう。
この覚悟に、己は誠意をもって応えなければいけないだろう。
「…分かった。雨月、お前は今日から俺の守護者だ」
戯言のつもりで言った「俺の守護者に」という言葉が、そのまま真実になってしまうとは思いもしなかったが、これもまた運命だ。
笑みの形に変わる口元を自覚しながら、ジョットも己の拳を前に突き出し、戦闘態勢を整えた。
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急に書きたくなったプリ雨再会話。
雨月さん、ジョットさん追いかけてイタリア来ちゃったよ
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