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大戦パロ

もうパロ話多すぎ!と思いつつ手が止まらなかったので書き逃げ。

設定:戦国時代全世界Ver.の世の中










――――――それが無謀なことだとは、その時のニールは思いもしなかった。
何せ、乱世と呼ばれる世の中だ。
下克上、部下や親兄弟の裏切りなど当たり前の様に横行していたし、昨日まで城主としてふんぞり返っていた人間が次の日には森の獣の餌になっているなんてこともよくある話だった。
そんな中、血を分けた実の兄弟である自分、ニール・ディランディと弟のライルが仲違いを起こすこともなく平穏に国を治めてこれたという事実は、この時代ではひどく珍しい事である。
決して狭いという訳ではないが、特に利があるという訳でもない小さな島。それが、この乱世で勝ち取ったディランディ兄弟の領地だった。
一卵性双生児である彼らには元々親兄弟がいて、この島のある街で平穏に暮らしていた。
特に何かを望んだわけでもなく、特に何かを奪ったわけでもない。
しかし、乱世は平穏だったこの島にも異変をもたらし、気がつけばたった二人きりの家族になっていた。
互いが互いを効率よく守る為に必死で立ち回った結果、とうとうこの島そのものを手に入れていた。
戦をしかけられさえしなければ何もしない、若いくせに保守的な国主と周辺各国から揶揄されているのを知っていたが、ニールもライルもそんな言葉には耳を貸さなかった。
そうして二人がこの島を手に入れてから約十年、平穏な時間が流れた。

その平穏が崩れたのはつい三ヶ月前。
突如、海の向こう―――対岸にあたる岬に、城が築かれたのだ。
海の向こうの情勢を慌ててかき集めて知った事は、それが大陸でも急激に勢力を伸ばしているハレルヤという男の砦だという事実だった。
戦上手で負け知らず、通った後には草木の一本も生えないという彼の噂は、こんな小さな島にまで届いており、事実を知った民は皆恐れ慄いた。
しかもあのような場所に砦を築いたという事は、この島にも攻め入る心積もりがあるということだ。

ライルとも相談し、対策を練ったりしたが結局何をしても絶対的に不利だという結論しか出てこず、とうとう、ニールは最終手段に訴えでた。
とどのつまり、城主の暗殺である。
幸いにもニールとライルは双子で、能力も殆ど変わりがない。
ここで片方が死んだとしても、あの島の治世には影響がないのだ。
だからこそ、国主自らがこんな行動に出るという無謀も無謀ではなくなる。

得意のライフルは今回の目的にそぐわなかったので持ち出さず、ハンドガンだけを持ったニールは、あっさりと自国の対岸にたどり着き、聳え立つ城をにらみつけた。

(ハレルヤ、ね。一体どんな奴だか)

いやに薄い警備の中、ニールは迷いない足取りで侵入を果たした城内を歩き回る。
見張りの数は必要最低限で、身の回りの世話をする人間なども全くといっていいほど見当たらない。
これではまるで隠居生活を送る人の城のようではないか、と半ば拍子抜けしていた。
だが、その落胆も奥に進むにつれて薄まっていく。
殺気というほど明確ではないが、得体の知れない悪意のようなものが、段々と濃くなっていくのだ。
これはいよいよお出ましか、と、ニールは歩調を殊更ゆっくりにしていく。

ハンドガンを持ってはいるが、正直ニールはこれで決着をつけるつもりはなかった。
暗殺なのだ。音はなるべく出ないほうがいい。
だからこそ、確実に命を狙える位置まで近づかなければならず、それゆえにニールの行動は慎重そのものだった。
頃合を見ながらテラスに出て、外伝いにそれらしい人間が滞在していそうな部屋を探して歩く。
と、やがてひときわ見晴らしのいい、広いテラスに行き着いた。
そこからはニールとライルが治める島もよく見えて、海の青とテラスに使われている石材の白とのコントラスト非常に鮮やかで、きれいな場所だ。

「―――――」

そしてそこには、目的の人物らしい人影もあった。
しっかりとした体つきの、いかにも戦に長けた風体の男が一人、テラスで転寝をしていたのだ。
片側を髪で隠している為一見隻眼にも見える彼は、事前に聞いていたハレルヤの身体情報と悉く合致していく。
肩にかかる程度の長さの黒髪で、体つきはがっしりしており、目の色は確か金色。
人を傍に寄せることを嫌い、休む時には人払いをするのだという。
それは危険の一言に尽きるのだが、この場においてはむしろ好都合だった。

ふ、と口元に歪んだ笑みを浮かべて、ニールは気配を殺したままハレルヤへと近づき、その首を切り裂くべくナイフを抜く。

「………ッ!?」

ニールが僅かに殺気を滲ませた、ほんの一瞬の出来事だった。
それまで穏やかに寝息すら立てていた男は急に何かにとりつかれたかのように跳ね起きたかと思うと、即座にニールの存在を認識し、手元のナイフごとその腕を地面へと叩き落す。
それが手刀であればまだ対処のしようがあったのだが、どれだけ柔軟な体をしているのだろう、彼はあろうことか足を高く上げてカカト落としでもってそれをやってのけた為、その全体重を片手ひとつでモロに受けてしまったニールは痛みに呻き声をあげた。
痛みに呻く侵入者を見て一瞬だけ傷ついたような顔をした彼は、しかし次の瞬間にはしてやったりとでもいう風な勝ち誇った顔をニールへと見せる。
その顔を見て一瞬怪訝な顔をしたニールだったが、その理由にすぐに気付いて蒼白になった。

「やっぱり来たね。ハレルヤの予想したとおりだ」

「……お前」

目の前で笑う、カカト落としをやってのけた男の目は、銀色。
思わず誰だと叫ぶと、律儀にも銀の目の男は「ハレルヤの影武者だよ」と答えてくれた。

「これはまた、随分そっくりな影武者だな」

「それはそうだよ。あなた方と同じように、ハレルヤと僕は双子だから」

ニールにはもう、咄嗟にナイフを突きつけるだけの力が残っていない。
体力に問題はなくても、影武者を名乗る彼の蹴りによる痺れが取れないままなのだ。
相当鍛えているのだろう。
背筋を冷たい汗が流れていくのを感じながら、ニールは極力余裕ありげに見える笑みを浮かべてみせた。

「お前さん、影武者が何なのか分かっていない訳じゃないだろう?本物と間違われて殺されることだってある。そんな役目を選んだのは何故だ」

生き延びてここを出られるとは思っていないが、ここで影武者にやられては格好がつかない。
ここを五体満足でやり過ごして、何とかハレルヤの元にたどり着く必要があった。
その後なら火刑でもギロチンでも好きなようにすればいいと思っているが、今はとにかく解決策を練る為ニールは時間稼ぎに出た。
妙なところで素直なのか、影武者の男はことりと首を傾げると、さも不可解だとでもいう風に質問主である侵入者を見やる。

「貴方の質問がよく分からないけど。僕はただハレルヤの為にできることを考えて、それがたまたまこれだったんだ」

「死ぬかもしれないのに、よかったのか?」

「誰よりも大切な弟が守れる事以上にいい事なんて、僕にはないよ」

何を当たり前の事を聞くんだろう、とばかりに不思議そうな声を上げる彼は、敵ながら天晴れな男だと素直に感じた。
今時珍しく、清廉潔白という表現がぴたりと似合う彼の名を、ニールは急に知りたくなった。
しかしニールが彼に名を尋ねるより先に、非常に不機嫌かつ不愉快そうな第三者の声が、彼の名を明かしてしまう。

「――――――アレルヤ。何勝手に戦ってやがる」

「!!………ハレルヤ」

アレルヤが声を上げるのと同時に、ニールから意識を完全に逸らした。
思えばこれが反撃とハレルヤ暗殺の最大のチャンスだったのだが、既にハレルヤ暗殺というよりアレルヤと呼ばれた影武者の男に意識を持っていかれてしまっていたニールは、この時完全に反撃という意思を忘れていた。

「バレバレの侵入ご苦労さん、ニール・ディランディ」

「……そりゃどうも」

アレルヤに睨みをきかせてからゆっくりとニールに視線を合わせた城主ハレルヤは、噂どおりの鋭い瞳を面白そうに細めた。

「!気付いてたの?」

「警備はボンクラだから気づいてなかったみてェだけどな」

言いながら、カツカツとニールへと近づいていく。
彼の得意武器は不明だが、服を着込んでいても分かるしっかりと作られた体と隙のない動きが、ニールにどうしようもない敗北感をもたらしていた。
これではもう、彼の首を取ることはできないだろう。
そう思い、諦めて瞳を閉じようとしたその時、ハレルヤから信じられない言葉が飛び出してきた。

「――――――なんだァ、怪我したのか?」

「………は?」

「手首だよ、手首」

「…ああ。さっき、」

「すげぇじゃねーか。アレルヤにやられて変形してないなんて」

感心したように言われても、少しもうれしくない。
それどころか、彼の蹴りが、下手をすれば人の形すら変えてしまうほどの威力なのだと遠まわしに脅されて、ニールは蒼を通り越して白くなった。

「おい、アレルヤ!こいつ暫く生かすぞ。医者呼んで来い」

陽気そのものの声でアレルヤにそう言付けると、ハレルヤはご機嫌な様子でニールの肩をバンバンと乱暴に叩くと、同級生を自宅に誘うかのような気安さで、ニールを自室へと誘った。







++++++++++++++++++++++++++++++
一度は書いてみたかったアレルヤ影武者ネタ
時代設定とかが難しくて半分くらい諦めてたけどなんか新刊のネタ出しとか原稿やってたらネタ神がついでのように私の脳みそに置いてってくれたので書き逃げしとく
全く校正してないから後で見直します……!!!!

まー戦いより馴れ合いメインのかるーい小話になる予定…である筈
プロット一切ないので予定は未定ですが(笑

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