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※年齢逆転小話。
意外にロックオンも苦労してるんです
刹那・F・セイエイは、ガンダムマイスター中最年少という立場にありながら、マイスター達の中では最も落ち着きがある。
育った環境や境遇が彼をそのように育てたのかもしれないし、元々口数が多くないのかもしれない。
だが、仲間達は皆、そんな彼を丸ごと受け入れ見守ってきた。
刹那は自身が手を焼く子供であることをそれとなく自覚していたのだが、それを覆い隠すほどの大らかさで受け入れられ、最初の頃は驚いてばかりいた。
しかし、程なくその「大らかさ」の要因に気がつき、妙に納得してしまったものだった。
その「要因」が、刹那よりいくつか年上の青年―――ロックオン・ストラトスである。
話した感じでは刹那よりもよっぽど付き合いやすい印象で好感がもてるのだが、時折顔をのぞかせる一部の性格が、周囲の手を煩わせているようなのだ。
故に、彼の扱いの大変さに比べれば刹那はずっとましだ、という判断がされているのである。
一言でいえば、彼はひどく直情的だった。
頭に血が上ってしまうと彼の面倒をずっと見てきた兄貴分の言葉さえも聞かず、そのまま突っ走っていってしまう。
そのためにいつも彼の兄貴分であるガンダムマイスターの最年長者アレルヤ・ハプティズムは、困った顔をしながら仲裁やフォローに奔走していた。
アレルヤは、休日さえロックオンの為に割いてしまい、私的な時間というのはほぼ皆無に近い状態である。
いくら文句を言わないとはいえ、これではいけないとマイスターの管理も担当している戦術予報士が頭を抱えている事を、刹那はよく知っていた。
さきほど通り過ぎた食堂で、重たいため息を吐いているのを目撃してしまったからだ。
滅多に食堂に現れない彼女は、刹那が通りかかったそのとき、オペレータのクリスティナ・シエラを横に座らせて何事かを話しはじめるところだった。
恐らくは、そのため息の原因について話そうとしていたのだろう。
それが必ず正解というわけではないだろうが、この艦のため息の要因の半分はロックオンに関することである。
確率的には決して無視できないし、何より戦術予報士の悩みの原因はかなりの割合がロックオン・ストラトスに関するものだ。
会話の端に彼の名も聞こえたから、まず間違いない。
本来彼に関することで一番ため息が多いのは彼と一番関わりのあるアレルヤだと思うのだが、実際には彼がため息をついている所というのはそう多くない。
憂い顔や困った顔をしていることはあるのだが、話をした印象では、ロックオンのことについては、ため息をつくほどのものでもないようだった。
「――――――お、刹那」
噂をすれば、というやつだ。
廊下の向こうからロックオンがやってくるのを見つけて、刹那は目を細めた。
「……どうした?」
「どうしたって」
ロックオンは、どこか妙だった。
一見普通ではあるのだが、妙に余所余所しい。まるで、何かが見つかるのを恐れているかのようである。
思わず思ったことをそのまま疑問としてぶつけたところ、面白いくらいにうろたえ始めたので、刹那は何かがあると確信した。
「落ち着きが無いようだが」
「ただ水を取りにいくだけだよ。アレルヤが部屋で潰れちまったんだ」
「…アレルヤが?一緒に飲んでいたのか」
酒を飲んでいたこと自体には驚かなかったが、共に飲んでいたという事実に驚き、刹那は軽く目を瞠った。
しかも、アレルヤが先に潰れたという事にも驚きが隠せない。
「……珍しいな」
率直な感想を口にすると、ロックオンも苦笑しながらそれに同意してみせた。
「まったくだ。俺も予想してなかったよ」
「体調は問題ないのか?」
「寝てるよ。ただ、飲んだ量も量だし、水があったほうがいいと思ってな」
言ってから、ロックオンは深いため息を吐く。
いつもはため息をつかれる側なのだ、たまにはいいだろうと思ったが…しかしその表情は不思議と真剣そうにみえた。
急いでいるだろうと判断した刹那はため息の理由を介抱することに対する面倒さか何かだろうと重い、深く追求することなくロックオンと別れた。
「……まったく、人の気も知らないで」
その為、すれ違った後にロックオンがつぶやいたため息の原因にかかわるその独り言には、ついぞ気づかないままだった。
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