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※今回は外伝組の話です。スパーク無料配布とつながってます。
『――――――幹部がこの街に?』
『はい。最近、その界隈における敵の勢力拡大が著しかったので、人材の配置を調べた所―――幹部の一人がよく滞在していることがわかりました』
たまたま情報収集の為に訪れた街。
色々と見て回っていた途中に入った諜報部の唯一の仲間―――ハナヨからの通信内容に、グラーベはサングラスの下の目を丸くする。
『幹部が指揮を執っている、ということか』
『……いえ、そういう訳ではないようです。ただ、人望はあるようで、滞在していることで安心感のようなものがあるのでしょう』
『ギンガ団の幹部にしては珍しいタイプだな』
『はい。なので、どのような人物か、調査していただきたいのです』
ハナヨは、その性格上いつも話す内容が端的だが―――洞察力のあるグラーベには、彼女の内側に秘められた感情や意図がそれとなく分かる。
調査という言葉の裏に、「もし、組織に賛同できそうな人物ならば説得を」という意図を感じたグラーベは、逡巡の後に頷くと通信を切った。
(…そういえば、ここは水源の街だったな)
街の情報は、任務がない時に地域情報を収集しているのでかなり詳しい。
そのため、今回降り立ったこの街は、そこかしこから湧き水が出ており、それが特に多い街の西側に大きな湖があるという事を事前情報として知っていた。
幹部に接触する前に自身の手持ちであるラプラスを休ませてやってもいいかもしれない。
そう思い立ったグラーベは、そのまま街の外れを目指して歩き始める。
グラーベの任務上、時には海や湖、川を越えていかなければならない場面も多いため、自然とグラーベのラプラスは「なみのり」を使うことが多い。
その分疲労も溜まっているから、と、グラーベは任務の合間にしばしば「彼」を休ませるのだ。
街の外は森が広がっているから、街道が整備されていなければ、もっと人口の少ない静かな街だったのだろう。
街にどういう意図があったのかはわからないが、大型店舗やマンションが並び、比較的大きな町になっている様子を見ていたら、すぐに町外れへとたどり着いていた。
釣りを楽しむ者もいれば、自分のようにポケモンを連れて歩いているような者もいる。
こんなにのどかな街にギンガ団が―――犯罪組織が入り込んでいるだなんて、誰が想像できるだろうか。
早速ボールから出したラプラスに湖で遊んでいろと言って、グラーベも水辺にしゃがみこむ。
グラーベのように水ポケモンを遊ばせてやろうとやって来ている者は多いようで、水辺には多くの水ポケモンが集まっていた。
「―――――…水辺に、ギャロップ?」
殆どが水ポケモンだったが、僅かに混じっていた場違いな属性のポケモン―――その中でも最も似つかわしくないと思える炎タイプがいたことで、自然とグラーベの視線は吸い寄せられる。
それは、ずいぶんと立派な体躯のギャロップだった。
炎のたてがみは色濃く勢いがあり、脚も四肢共にしっかりと筋肉がついていて、よく引き締まっている。
一体どんな手入れをしているのかは知らないが、見た目はポケモン愛好家が泣いて喜ぶほどの美しさだ。
ただ水を飲んでいるだけの姿だったが、ポケモンの見た目に無頓着であるグラーベから見ても美しいポケモンであることは一目瞭然。
しかも、恐らく相当強いだろう。
雰囲気から伝わってくる威圧感でグラーベは漠然とそう理解していた。
『――――――やあ』
『!』
ポケモンに見入っていたら、人の気配が近づくのに気づくのが遅れた。
自分の失態に僅かに動揺しつつ振り返ると、そこには一人の青年が立っていた。
笑みの表情を作っていたが、それは微妙な不自然さを残していて―――グラーベはすぐにそれが作り笑顔だと分かる。
『ボクのギャロップが気になるのかい?』
(この男…)
色素の薄い金髪を揺らして歩み寄ってきた男は、言いながら自身も水辺へと視線をやった。
違和感には気づかなかったふりをしつつ、グラーベもつられるように水辺へと視線を戻す。
『水辺にギャロップがいるのが珍しかったので、思わず見ていた。』
『少し疲れているようだったから、息抜きにと思って連れて来たんだ』
『…そうか。私もだ』
多弁なほうではないのか、男はギャロップを…自分のポケモンを見ていたグラーベにいくつかの質問をしただけで、後は何も言わなくなる。
グラーベもあまり多弁な方ではないが、彼も同等にしゃべらないらしい。
近くにいながら会話が全く広がらないという状態になった二人は、やることもなく、ただ自分のポケモンを見守ることにした。
『…ああ、もしかして、あのラプラスがキミの』
『そうだ。しかし、何故分かった?』
『あのラプラスが、よくキミの動きを追っているからさ。よく懐いているんだね』
どう返したらいいのか、すぐには思いつかず―――グラーベは曖昧に相槌を打つ。
しばらくは、互いのポケモンを見守っているだけだったが…急に金髪の男が口を開いた。
『――――――キミ、外から来たんだろう?』
『ああ、そうだが』
『この街に長居すると危ないよ。早めに去った方がいい』
意味深な言葉に、グラーベは思わず臨戦態勢をとる。
だがその警戒を察した男が、苦笑しながら首を振った。
『…近いうちにギンガ団の内部抗争が起きるかもしれない。巻き込まれたくなければ、早めに街を出ることだ』
『何故、それを私に?』
『キミがソレスタルビーイングだから、かな』
『…』
『冗談だよ。まあ、近くには来ているかもしれないけど』
ソレスタルビーイングの構成員である証拠は何一つ所持していない筈だったので、おかしいと思いつつ見つめ返すと、すぐに男は肩をすくめて苦笑した。
『キミは見た所、いい人そうだから。忠告だけでもしておこうかなと思っただけさ』
『……そうか』
礼を言ったらいいのか、警戒すればいいのか…返答の仕方に困っていたら、男はそのまま水辺のギャロップに声をかけてボールへと戻すと立ち去っていく。
何となく気になって小さくなっていく背中を見つめていたが、ふと思い立って端末を開き、ハナヨが送信してくれた調査対象の情報を呼び出す。
(…白に近い金髪と、青い目。白のコート。……まさか)
まだ探し始めるつもりがなかったので目を通していなかったのが悔やまれる。
この情報を見る限り、あのギャロップの主人である男は、ギンガ団幹部で間違いなさそうだ。
普段は北端の街にある本部で過ごしているというが、一体何のためにここに来ているのだろうか。
(それに、あの男がギンガ団だとは思えない)
長年、諜報任務の為にギンガ団の構成員達をすぐ近くで見てきたグラーベには、彼がギンガ団らしい気性ではないように思えたのだ。
表面上は、確かに何を考えているのか分からないし、あの隙のない目つきはギンガ団の幹部というだけあって迫力がある。
だが―――――。
(彼はギャロップを大切にしているように見えた。ポケモンは道具だと考えるのがギンガ団の考え方だが…彼は違う)
よく手入れをされていたのもそうだが、ボールに戻る前に見せた彼のギャロップの眼差しは、主への絶対的な信頼があった。
恐らく長い間あのギャロップと行動を共にしているというのもあるだろうが、気位の高いギャロップがあそこまでひたむきに主へ情を示すことは滅多にない。
そんなギャロップにあれだけの目をさせるというのは、彼がギャロップをとても大切にしているという事実に他ならない。
そしてそんなギンガ団構成員を、グラーベは今まで見た事がなかった。
(応じるかは分からないが…スカウトをする価値はあるだろうな)
情報をくれたハナヨに感謝しつつ、こっそりとグラーベは彼を勧誘すると決心した。
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自分だけが楽しいポケパロ@外伝組(笑)
無駄に続きます。
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