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※ヒクサー加入編の続き。
――――数日間探りを入れてみたが、ギンガ団の新たな拠点のひとつである、という情報以外に目新しいものはなく、先日出会った男の言う「内部抗争」とやらも起きる気配がない。
あと一日滞在して何もなければ、ひとまず一度引き上げなければならないだろう。
ハナヨの定期連絡を聞きながら、グラーベはそんなことを考えていた。
『そちらでは、何か変わったことはありましたか』
報告の最後、ハナヨが珍しくこちらへと問いかけをした。
彼女から話を振るということがまず珍しかったので一瞬グラーベは瞠目し、しかしすぐに気を取り直すと緩やかに首を横に振る。
『…いや。ここの構成員は大人しい、ということくらいだな』
『そうですか。――――――その近隣の火山に生息していたはずの"ファイヤー"の姿が確認できなくなった、という報告が上がっているので、何かあるのかもと思っていたのですが…』
『…ファイヤーが?』
グラーベは、思わず鸚鵡返しに尋ねてしまう。
ファイヤーというのはこの地域に古くから生息しているといわれる鳥型ポケモンで、孤島に住まうフリーザー、荒地の無人発電所に住まうサンダーと並ぶ伝説のポケモンでもある。
特にファイヤーは寿命を迎えると炎の中から再生するという言い伝えもあり、一部の地域では神聖視されているようだ。
『ファイヤーは、3年に一度ではありますが、必ず同じ季節に同じ場所で目撃されています。それが、今年は確認できなかったとの報告が上がっています』
『……』
『たまたま、というにはタイミングが良すぎる。なにかがあったと考えるのが妥当かと思われます』
『やはり、もう少し確認する必要がありそうだな』
『はい。…そういえば、スカウトできるかもしれないと言っていた"彼"については?』
『あれから姿を見せない』
応えると、ハナヨが少し考え込むような様子を見せた。
『彼は、その街の駐留部隊の遂行する作戦とは無関係である筈。けれど、姿を見せないということは…何か、今回の件と関係があるのかもしれません』
『そうかもしれないな』
尚も食い下がるハナヨの言動を不思議に思っていると、それが顔に表れていたのか、ハナヨがくすりと笑みを零した。
『私は、貴方が自発的に"スカウトしたい人物がいる"と言ってきたその彼に興味を抱いています。是非、ソレスタルビーイングに引き入れてくださいね』
『……ああ』
そんなに分かりやすい顔をしていたのだろうか。
なんとなく居心地悪く感じたグラーベは、むっつりと黙り込むと素っ気のない返事をして通信を切った。
(ファイヤーの件は初耳だった。その点を考慮に入れて、もう一度最初から整理してみるか…)
グラーベは考え事をしながら、ここ数日通い詰めの湖へと足を向ける。
あわよくばまた『彼』に会えるかもしれないという思いもない訳ではなかったが、概ね考えの整理の為にやって来ていた。
にぎやかだが、そのにぎやかな雑音がグラーベの思考を程よく深く沈めてくれるのだ。
もう夕暮れに近い時間ということもあり、日中のようなにぎやかさはなく静まり返っている。
どうやら、いるのはグラーベただ一人のようだった。
(この街には、研究施設がある。あそこで、何らかの計画が進んでいるということまでは掴んでいたが…それがファイヤーに関するものだった、という事なのか?)
考えながら、その施設がある方を眺める。
街の景観を壊してはならないという街の意向で、ギンガ団が隠れ蓑にしている企業の施設も三階建て以上のものは存在していない。
その中でも最も大きな建物が、何かの研究をしているらしい組織の所有物だという。
「…?」
夕焼けで赤みを帯びて見えるその建物をなんとはなしに眺めていたら――――僅かに白い煙が昇っているのが見えた。
思わずそれを凝視していると、今度は爆発。
破壊音のようだったから、恐らくは壁がポケモンの技か、爆弾のようなもので破壊されたのだろう。
そして程なく、研究施設の方から大勢のギンガ団員たちが湖畔に駆け込んできた。
もつれ合うようにしてやってきた彼らはいずれも服が焼け焦げていて煤だらけで、中には服の端が燃えている者もいる。
服が燃えている者は我先にと湖に飛び込んでいき、そうでない者は湖畔にたどり着くと力尽きたように座り込み、あるいは倒れこんだ。
「――――事故、か?」
彼らがいるのは湖の反対側なので、湖越しに観察しながらグラーベはひとりつぶやく。
一体何が起きているのか調べてみようか。
そう考えて研究施設に向かうべく足を向けようとした矢先、その研究施設の方からまた一人駆け出してくるのが見えた。
燃えさかる鬣を揺らしたギャロップに跨る青年―――あの幹部の青年だ。
爆発に巻き込まれたのか、白いコートは僅かだが汚れていて、ギャロップの方も少し煤けている。
あっという間にグラーベのいる湖の反対側まで駆けてきたギャロップは、見覚えのあるグラーベを目にして何を思ったのか、急に足を止めた。
一瞬訝しげな顔をした青年だったが、ギャロップの視線の先にグラーベの存在を見止めるなり瞠目する。
「!キミは…」
青年はグラーベを見るなり何か言いたそうな仕草を見せたが、背後から更に大勢の人の気配が近づいてくるのを察するなり、ギャロップを急かして駆け出してしまった。
足元の悪い森とはいえ、ギャロップの足は速い。こちらもポケモンの足に頼らなくては追いつけないだろう。
すぐにそう判断すると、グラーベも手持ちから人を乗せて走れるポケモンを選んだ。
が、ポケモンをボールから出して追いかけるよりも先に、背後から迫っていた者たちがグラーベに追いつく方が早かった。
「なんだキサマは!さては、ヒクサー様の協力者か!?」
一番手前にいた男が、そんなことを言いながらびしりとグラーベを指差す。
(なるほど…ヒクサーという名なのか)
初めて知ったその名をかみ締めていると、その沈黙を肯定と取ってしまったらしいギンガ団の構成員達があっという間にグラーベを囲んでしまう。
「裏切り者のヒクサー様…いや、ヒクサーの協力者なら、容赦はしない」
「彼は…ヒクサーは、何をしたんだ?」
「とぼけるな!!せっかく捕らえたファイヤーを…!」
誘導質問をしてみると、あっさり情報を明かしてくれた。
どうやら、ギンガ団はファイヤーに関するなんらかの計画を進行しており、それをあの幹部の青年―――ヒクサーが妨害したという事らしい。
(…という事は、ヒクサーはギンガ団を追われた、という事か)
「―――――やれ!!」
たくさんのギンガ団員に囲まれながら、グラーベはそんなことを考えるくらいに余裕があった。
元より、一人で危険な地に赴くのが任務の諜報員なのだ。幹部クラスがいないギンガ団員の十人や二十人、なんということはない。
しかしながら、今回は早くヒクサーを追いかけたいという気持ちがあったので、短期決戦でいくことにした。
懐に隠している手持ちから二匹を選び出すと、モンスターボールを地面へと放り投げる。
「ウツボット、"どくどく"。キュウコン、"ほのおのうず"」
ボールから開放されるのと同時に指示を出すと、二匹は指示通り、ギンガ団員たちのポケモン全体めがけて攻撃を仕掛けた。
一対多数の戦いに慣れているグラーベと、戦闘経験はあるのかもしれないが実力において不足のあるギンガ団員達との戦いは、ものの数分で決着がつき、殆ど無傷でグラーベはこの戦いに勝利。
撤退していく彼らの背すら見送らないまま、改めてヒクサーを追うべく踵を返した。
「あのギャロップを追いかけてくれ」
戦闘でも使ったキュウコンに跨りながら、疲れているのにすまないな、と、声をかける。
キュウコンは心得ているとばかりに軽く目を伏せ、そのまま優雅に足を踏み出した。
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ほんとに私が楽しいだけ(笑)
もうちょっとだけつづくよー
手持ち妄想。↓
【グラーベ】ラプラス/ヤミカラス/キュウコン/ドンファン/ウツボット/(残り1匹未定)
【ヒクサー】ギャロップ/ウィンディ/ライボルト/ファイヤー/ダイケンキ/ロズレイド
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