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※ポケモンパロ@グラヒク編。
さりげなく「ポケモンパロ3」とつながってます!



 


ほとんど住む人間のいない、小さな島の山道を歩く人影が二つ。
片方は白を基調とした服装、片方は黒を基調とした服装をしており、はたから見るとまるで正反対だ。

「…まだ拗ねているのか」

「………拗ねてるよ!」

白い青年は、黒い青年の指摘と自己申告の通り、拗ねていた。
理由は簡単。
置いていくつもりだったポケモン―――負傷しているギャロップを、黒い青年の一言が決定打となり連れて行く羽目になってしまったからだ。
たまたま、預けるつもりだった相手が、入れておくだけで体力が回復するという機能をもったボールを提供してくれたからこそ、ヒクサーもしぶしぶ頷いたのだが…正直なところ、連れて行きたくなかった。
今歩いているここは決して足場がいいとは言えないし、もし仮にバトルになろうものなら、ギャロップは全力で戦いたがる。
それは、足を怪我しているヒクサーのギャロップには、絶対にやらせたくないことだ。

「グラーベちゃんも知ってただろ?ギャロップは足を怪我してるんだ。この状態で無理をすれば、下手をしたら二度と走れなくなる」

「だが、置いていけばそのギャロップは彼の家を飛び出してでもついて来たかもしれない。前例がない訳ではないからな」

「…………」

「ギャロップは足の速さが命だ。お前が心配する気持ちは分かるが…そのギャロップの性格上、無理をするなという方が無理な話。そうだろう、ヒクサー」

黒い青年…グラーベの指摘に、とうとう白い青年…ヒクサーは黙り込む。

彼の言うとおり、確かにヒクサーの手持ちポケモンであるギャロップは、無理をするところがあった。
まだポニータであった頃からそういうところがあったから、もはやそういう性格なのだろう。
昔、ある組織にいた頃は多少負けん気が強いだけだと思っていたのだが、組織を抜ける時に発揮されたその芯の強さに、主でありながらひどく驚いたのだ。

「まあ、このボールにいる分には、いいんだけどさ」

「…そうだな。回復したら、出してやればいい」

グラーベの言葉に、ヒクサーが心なしか落ち込んだ様子でこくりと頷き返す。
年齢からすれば少し幼いその仕草はここ半年程で現れるようになったもので、実はこのソレスタルビーイングに入る前後の彼は、こんな仕草どころか、グラーベのように無表情そのものだった。


 

(…ヒクサーにとっては、どっちが幸せだったのか…いや、聞くまでもないか)

一瞬、衣食住はもちろん見返りも多かったであろうかつての居場所と今の居場所、どちらが良かったのか、と聞きかけて、グラーベはすぐに口をつぐむ。
今いる組織…ソレスタルビーイングは、待遇は決していいとはいえないし、諜報部隊とて自分たち二人と、遠方に出ているハナヨの三人だけ、という極少数。
単独で敵の近くまで行くこともよくあるし、存在が知られてしまった場合、一対多数のバトルを強いられることもある。
そのため、諜報部隊の面々は一対多数のバトルに慣れており、手持ちポケモンも大技を持つ強いポケモンばかりを揃えている。
そのことからも、過酷であることには間違いがないのだが―――ヒクサーは「仲間」になってから、表情がだんだんと緩んでいき、笑顔も増えた。
かつての、無表情かつ無口だった頃とは大違いだ。
 

しかしおそらくは、こちらが本来のヒクサーなのだろう。
その笑顔を見るたびに、グラーベは改めて、あの日彼に手を差し伸べてよかった、と思うのだ。
 

「――――――グラーベ、ちゃん」

「…!」

心なしか堅い声につられて視線を前方に戻すと―――少し遠くに複数人の気配が感じられた。

「どうやらこの辺りで間違いなかったようだな。気をつけて歩くぞ」

自分にも言い聞かせるつもりでそう言うと、ヒクサーも頷く。
グラーベは事前にヤミカラスをボールから出し、ヒクサーもウィンディを出した。

ヤミカラスは小型である上に色彩も暗色なので目立たないが、ウィンディは人が二人くらい乗ってもそのまま走れる程に体が大きい。
その分、少々目立ってしまうものの、ガーディ同様にウィンディは鼻が利く。

「…ポケモンや人がたくさん集まっている所、分かるか?」

ヒクサーの問いや意図は、ギャロップの次に長く連れ歩いている為に分かっているようだ。
心得たとばかりに、ウィンディはそろり、と静かな足取りで前を歩き始める。
それと同時にヤミカラスが霧を発生させ、敵に見つかりにくい状況を作り出した。

「…予想が外れてればいいんだけど」

「そうだな」

「オレ、戦闘は嫌だなあ」

困ったような調子を含んだヒクサーの声音は、少しばかり低くなった。

(…やはり、まだ戦闘中は癖が抜けないんだな)

ヒクサーは、バトルになるとどうしても「昔の性格」が強く出てしまい、別人のようになる。
ソレスタルビーイングに入ってから認知されるようになった性格しか知らない面々が見れば、きっとひどく驚くだろう。
グラーベとしては、できればバトル中でも今の彼のままでいて欲しいと思うのだが―――長年培ってきたものだから難しいのかもしれない。

彼は強いが、戦闘が嫌いだ。
グラーベ自身も弱くはないが、ヒクサー同様、戦闘は好まない。
それにヒクサーの昔を思い出させる様子を見ているのも好まないので、必然的に戦闘は早く終わらせるべきだ、と考えていた。
 

「仮に戦闘になったとしても、すぐに終わらせる」

「……期待しているよ、グラーベ」

気配が近いためだろう、ヒクサーは殆ど昔の表情と声音になってしまっていたが、それでも口元にどうにか笑みを作っている。
そこに僅かながらの進歩を感じて、グラーベもまた不器用なりに笑みを返した。

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