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※時間軸的に出会い話本「Target」後くらいで。
――――――退役手続きがあるとかで、あの見た目に反してやたらと騒ぎがついてまわる男が去って三ヶ月。
次の仕事も決めていなかったロックオンは、ただ部屋に篭ったり馴染みの店で雑談をして帰ったり、といった自堕落な生活を送っていた。
何せ、稼ぎに見合わないこの狭苦しい部屋で何年も暮らしていたのだ、桁なんて数えることすら億劫になるほどの蓄えがある。
勿論、装備や設備の維持があるので、仕事をしなければこんなものはすぐにでもなくなってしまうのだが。
しかし、そうは言ってもやる気が出ないものは出ないのだ。
狙撃手に戻るつもりはない。
承知の上で、と言ってティエリア経由で何件もの依頼がきているのは知っているが、あの最後の仕事で仕入れた残りの弾は、手入れを怠った為に使用不能である。
今までは一日一時間でも銃に触れなければ落ち着かなかったというのに、今はもう三週間もアレを手にしていない。
その代わりに思い出すのは、見た目の印象に反して幼い笑顔を持つ元軍人の顔ばかりである。
(そういや、あいつ一人で移動とかできんのか…?)
多国籍軍の本拠地は、当然この国ではない。
何処だったかは忘れたが、ここに来るにあたっては入出国手続きに加えて言語の壁なんてものもあるかもしれない。
そういったもので手間取っているのだとしたら、やはり連絡先のひとつでも教えておけばよかったか、と悔しくなる。
めまぐるしく考えながらも、ロックオンは己が「彼と再会する」という事を当然の事として受け止めていることには全く気づいてなかった。
そして。
そんなロックオンの心配をよそに、再会は意外な場所で果たされた。
「………なんでお前さん、ここに」
「え?えっと、この辺に部屋借りたから……ですけど」
なんと、食材の買出しに出かけたマーケットで、巨大な紙袋を抱えた元軍人―――アレルヤとばったり出会ってしまったのだ。
彼は既にこの町に見事に馴染んでしまっていて、ラフな白いシャツ姿がしっくりと似合っている。
買い物袋同士がぶつかって軽く中のものが落ちてしまわなければ、きっとそのまま通り過ぎてしまっていただろう。
それくらいの自然さに、ロックオンは彼の気配の希薄さを改めて思い知らされた。
「お前さん、やろうと思えば諜報部隊にも入れたんじゃないのか?肩が触れなかったら気づかなかったぜ」
「また、そんな冗談を。相変わらずだね、ロックオン」
「いや、本当に」
傷ついてしまった分の果物を買い足し紙袋に追加してやって、二人は並んでマーケットを出た。
歩きながら出た一言は、まさに本心からの一言である。
刹那も似た部分があるものの、彼は年齢的な制限がある分、潜入範囲にも限界があった。
アレルヤならば、あるいは刹那とはまた範囲の違う破壊屋としての仕事もできるのではないだろうか。
今は中東で富豪の娘の護衛依頼を遂行中であろう元仕事仲間のことを思い出しながら、彼に対してご愁傷様、と声をかける。
アレルヤが仕事をするなら、裏社会でいうならこういった類の仕事だろう。
表社会の仕事もありかもしれないが、これだけの力を持った男を表の世界に野放しにしておく奴はいない。
仮に表社会で生活をしていたとしても、いずれは何かに巻き込まれる。
今までに何人もそういった人間を見てきたから、ロックオンにはやがて訪れるであろう彼の未来がよく分かっていた。
「実はね、事前に連絡先を知っておけばよかった、と思って、こっそりティエリアと連絡を取ったんだ」
「あいつ…俺の所には何も」
「うん。僕が口止めしたから」
落ち着いてから知らせに行って驚かせようと思ったんだ、といたずらっ子のような顔で言われて、ロックオンは思わず買い物袋を取り落としそうになってしまった。
上に封がされていて良かった。
少しテープがはがれかけた紙袋をよいしょ、と持ち上げなおして、ロックオンは眉間に寄りかけた皺を伸ばしながら、深いため息を吐く。
「そんな事はしなくていい。引越しとか大変だったろ?何で知らせなかったんだ」
もっともらしい理由を舌の先に乗せてみたところ、何故かアレルヤが意外そうな顔をする。
「引越しっていっても…僕のは大きめの旅行カバン一つだったから」
「………そんなに少なかったのか?」
「うん。服もそんなに持っていなかったし。ああ、でも昨日今日で随分荷物が増えたよ」
そういえば、軍人は行方不明になった時や死亡時に備えて、必要最低限の物品しか持っていないと聞いたことがある。
理由は、残された同僚が処分に困るというのが一番だろうが―――何か思い入れのある品を置いておくと、未練が残っていけない、といった風ないわれがあったからだ。
それに従ってアレルヤも、思い入れの品やお気に入りの品というものを持たなかったのだろう。
しかし、それはあくまで軍人時代の話である。
これからは、きっと彼個人を示す持ち物が増えていくだろうから、彼の部屋は彼らしい雰囲気を出していくに違いない。
「じゃ、その片付けが済んだら呼んでくれよ。料理くらいはしてやるぜ」
「本当かい?楽しみにしているよ」
くす、と笑って歓迎の意を表すと、アレルヤは「僕の家はあっちだから」と言ってぱたぱたと走り去っていった。
沢山あるマーケットの中でもあのマーケットにやって来る、という事は、彼は相当近くに部屋を借りたらしい。
「…あんなに急いで、転ばなきゃいいが」
アレルヤの後姿を見送りながら、これから訪れるであろう新しい日常を思って、ロックオンはふっと小さく笑みを零した。
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めっさ突発ですけど(笑
何でも屋出会い編になっているオフ本「Target」のその後みたいなお話です。
アレルヤは軍を辞めたばっかり、ロックオンも仕事をやめたばっかり、で、プー同士
ニートじゃないよプーだよプー
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