※軍属時代のアレルヤとでも思ってください








天候を気にする必要のない雲よりも高い空域で、煌めく何かが存在していた。

空気抵抗によるすさまじい風切り音と高速航行による身体への過大なる負荷に耐えながら、太陽で煌めく金属の塊―――MSを繰る各国パイロットは相手を撃ち落とすべく必死に飛び回る。
こまやかな動きができるよう、MSと呼ばれる機体はいずれも人を模した形をしている。
それには空中を自由に動き回るための推進機構が取り付けられており、腕にはサーベル・マシンガン、バズーカなどといった武器が握られていて、相対するたびにそれらを駆使して相手を地上へとたたき落とそうとする。
そしてそうした機械の人形たちが戦いを繰り広げている中、まるで場違いな航空機が飛び回っていた。
その戦闘空域で唯一MSではないそれ―――MAは、オレンジとアイボリーの明るい色彩を青空に残像として残し、MSのサーベル攻撃を見事に避けていく。
ならば、とマシンガンを撃てば機体を半ロールさせて着弾面積を最小状態にして素早く離脱してしまい、やはり弾は一つとて当たらなかった。

しかし、何度目かの撃ち合いののち、１発が当たったのだろうか、急にコントロールを失って落下していく。
当然、MSパイロットたちは見向きもしなかったのだが、彼らは撃ち落としたMAが落ちていく姿の異様さ―――ほとんど煙を吐いていないことや妙に大周りに円を描くようにして落ちていく様子には気付かなかった。
だが曲がりなりにも戦闘を職業そのものとする彼らは本能的に何かを察知し、コンマ数秒の遅れでMAの危険を察知するも、そのコンマの遅れで気づいても手遅れだった。

不調の振りをして落下していたMAは突如機首を持ち上げ左舷へと方向転換をするついでにマシンガンを連射。
たった数発で近くを通過しようとしていたMS一機に致命的な損害を与えると、即座に方向転換をした。
落下ルート付近にいたMSは、MAパイロットの読み通り、落下ルートを避けた想定通りのポイントに集まっている。
そんなMSの何機かを、翼と同化させたブレードで両断していく。

「…気づくのがちょっと遅すぎたかな」

苦笑して、MAパイロットはブレードから逃れた幸運なMSに向けてためらいなくトリガーを引く。
人差し指ひとつの動作で発射されたマシンガンの弾は散弾銃のように照準に定めた位置の周囲に展開し、こちらから逃れようと方向転換しかけていたMSの胴体にぽっかりと穴をあけた。

時代遅れと言われるMAにやられた、という事実をようやく認識し始めたらしい相手は、隊を組んで向かっていったが―――滞空していたMAにたどりつくことなく、真下から突如やってきた砲撃により吹き飛んでしまう。
周囲にはしばらく煙だけが充満していたが、やがてそれは薄らいでいき、その煙を切り払うかのようにやってきたMSが残った煙のすべてを飛ばしてしまった。
腕には、先ほどの砲撃の主であることを示す、巨大なバズーカが二基。
そのMSのカラーリングの一部であるオレンジは、空の青と雲の白の中では異様に目立つ。
それは、まるで標的になることを望んでいるのだ、と自己主張をしているようにもみえた。


「遅かったね、ハレルヤ」

MAパイロットは、そこで初めてへの字に結んでいた口元をほころばせる。
自機と全く同じカラーリングを施されたMSに通信をつなぐと、社交辞令的に声をかけた。

『艦隊を一人でやるのに十五分ってのは上出来だろうが』

「護衛隊全部を請け負った僕にそれを言うのかい？」

社交辞令とわかっていながらも不機嫌に反してきたMSパイロットに嫌みの一つを投げつけてみると、五十歩百歩である互いの状況を認識して、仕方なしという風に黙り込んでしまう。
その素直さがおかしくて、つい笑ってしまったが、彼は怒りだすようなことはしなかった。

『帰るぞ。そろそろあっちも終わってる頃だろうよ』

「了解」

戦場での他愛のないやりとりの終わりを宣言されたMAパイロット―ー―アレルヤは、すぐに表情を引き締めると通信を切った。

「GN-003Aキュリオス、これより帰投します」

ボイスレコーダーに言い聞かせるかのように呟くと、Aキュリオスはウィングを傾けて雲の下へと潜っていく。

「…GN-003Sキュリオス、帰投する」

どこかうんざりした声音で同じように宣言すると、Sキュリオスは装備していたシールドを前面に配置して、同じように雲の下へと降りて行った。



彼―――――この時代では希なMAパイロット、アレルヤ・ハプティズムが、突如退役するほんの三か月前のことである。





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何でも屋パラレルの世界では、軍には普通にMSとか先端機器とかが出そろってます。
軍や国の主要施設はかなりハイテクだけど、他はローテクみたいな感じで。

まだしっかり決まっていないですが、アレルヤはMS部隊で唯一のMA乗り設定（笑）
アレハレはコンビでの戦闘を得意としてます。

キュリオスが可変じゃなかったらMA版とMS版があって、それぞれにアレハレが乗ってたらいいな、という妄想がここにつぎ込まれました…