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※「You Got Me.」に続く後日談(後日談多過ぎというツッコミは受け付けますまじごめんなさいorz)。
ライハレFlg成立&相変わらずなロクアレのお話。
うっかりライハレメインで更に後の話を書きたくなったとかそういうオチ
元家庭教師にして現学校教師―――ニール・ディランディことロックオン(というあだ名らしい)がこちらへやってくる、という情報を得たのは、実はハレルヤの方が一足早かった。
ただし、ニールが連絡不精という訳では決してなく、単に彼の弟であるライルがマメ過ぎるだけの事である。
何せ、彼は始業直前にわざわざ携帯端末でハレルヤに連絡を入れてきた事もあるくらいだ、相当に会社では暇を持て余しているのだろう。
彼が言うには、ニールは学校の長期休暇に合わせて、溜まりに溜まっていた有給を取得したというのだ。
その尋常ならざる長さから、ライルは本人に話を聞く前にあたりをつけて情報を流してきた。
ハレルヤ自身はそんな情報知りたくもないと思うのだが、彼は「お前の兄さんが喜ぶだろ」だの何だのと言って、嬉々として話を振ってくるのだ。
――――――最近はこういう実のある(といっていいかどうかははなはだ疑問だが)情報をもたらしてくるライルだったが、それ以前の彼の話は、とにかくどうでもいい日常の話ばかりだった。
ひどい時は季節のイベントの話や天候の話、果ては自身の日常の話なんていう、ハレルヤからすれば興味など引かれる筈もない話をされることさえあったのだ。
あまりの下らなさに、話の途中で通信を切った事もあるのだが―――それでも彼の連絡が途切れることがなかった。
これがもう何年も続いてしまうと、ハレルヤもさすがに諦めがついてくる。
迷惑だと言っても面倒だと言っても、ライルはとにかくこまめに連絡を寄越してくるのだ。
いっそそのマメさを恋人にでも発揮したらどうだと思うのだが、そんな話を振る気にもならない。
ディランディ兄弟はあのよく回る口から生まれてきたのだろう。きっと、そうに違いない。
数ヶ月に一度だった通信が月に一度に、そして最近ではとうとう二、三週間に一度という頻度になってきたライル・ディランディの通信は、もはやハレルヤにとって立派なストレッサーとなりつつある。
無機質なコール音とコール主たる通信相手の名を眺めて深いため息をつきながら、ハレルヤは端末をテーブルからひったくるように取り上げた。
「くっそ…何で俺だけの時にかかってくんだ!」
互いに都心で仕事をするようになった為に二人で借りた家は、幼少期を過ごした養父の家に比べて随分安っぽいつくりである。
養父の援助を断り、自分たちが学生時代に稼いでおいた金だけで借りたからだ。
その為に最寄りの地下鉄までは徒歩でも随分かかるし、外壁も内装も手入れが悪い上に薄汚く、壁は薄いというおまけつきである。
それでも二人はこの自分たちだけが存在しているというこの家が気に入っていた。
養父の家が嫌いだった訳ではない。
養い子に過ぎないから、早い段階で自立しなければ、という危機感に追われての生活は、少しばかり息苦しかったのだ。
養父であるセルゲイはまるで実子のような扱いをしてくれ、大学の費用まで出してくれたが―――これについても、少しずつ返していく心積もりでいる。
『――――――お、早かったな』
すぐに切ってやろうと思いながら通信回線を開くと、途端に暢気な声が端末から響いてきた。
お人よしの元家庭教師と同じ顔だというのに、ライルは何処か人を食ったような顔つきをしている。
「…じゃあな」
『こら!まだ何も話してないだろうがっ』
「話すことなんてねーよ」
そもそも、ライルの話は九割がどうでもいい内容だ。
というよりも、通信をする目的自体あってなきようなものだから、どうでもいい内容になってしまうのも仕方のないことといえるのだが。
それを指摘すれば、きっとこの無意味な通信も終わるのだろう。
ハレルヤは、確かにそれを望んでいる筈なのだが―――二度、三度とタイミングを逃しているうちに、すっかりその指摘ができなくなってしまっていた。
この自分が、まさかライルとの無意味な会話を楽しんでいるというのだろうか。
そんな事は決してない、と思いながら、しかし今日もやはり、通信をすぐに終わらせる事ができない。
ライルは相変わらず自分の仕事のことだとか(守秘義務はないのだろうか?)、天気の話だとか、国の情勢の話だとか―――世間話のようなことを一方的に話すだけである。
その上、あちらも時間からして休んでいるタイミングである筈なのに、彼の背後に見える部屋はとてもじゃないが自室には見えない。
そんな、気づかなくてもいい事に気づいてしまったハレルヤは、途端に眉間に皺を寄せる。
「おい、仕事はいいのかよ」
『ん?ああ―――今は休憩中』
暗に指摘すれば、そんな事は気にするなとでもいう風にひらひらと手を振って、それで終わりにしてしまった。
全く、気に食わない。
珍しく気にしてやったというのに、こういう場面ではその気遣いをなかったことにしようとするのだ。この男は。
急に親身になってきたかと思えば、変なところで突き放したがる。
距離感を保つのが下手な男だ。
こんな事で、よくやってこられたものだとつくづく思う。
勿論、こんな男の人生や人間関係に欠片ほどの興味もないのだが。
ため息をついてから、アレルヤの「そんなにため息ばっかりついてると幸せが逃げ出すよ」という言葉をふと思い出す。
だが、出てしまうものは仕方がない。
というよりも、ため息をつかせている原因がいけないのだ。
「っとに、何の用だよ?これ以上下らねぇ話が続くなら、切るぞ」
『いや、その―――兄さんはもうそっちに着いたかな、って思ってさ』
無駄話をひとしきり続けた後にようやく出た本題を聞いた時、何故かハレルヤは冷水を浴びせられたような気分になった。
どういう訳か、彼は急に無表情になったのだ。
大抵、口の端が少し歪んでいるか、情けない顔か、すまし顔をしているのが常の男であるだけに、唐突に能面のような顔をされると、動揺してしまう。
「…まだ着いてねえ。そもそも到着予定時刻まであと四時間はある」
『――――――そっか、そうだな』
「……」
思い出そうとしたわけではなかったが、ハレルヤは唐突に彼の、いや、彼ら兄弟の境遇を思い出した。
ニールが大学を卒業する間際、一度だけ、彼は授業の日に遅刻してきたことがある。
悪いな、と謝っていた時の顔が、通信画面の向こうにいるライルの顔と妙に重なって見えて―――それでようやく合点がいった。
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ちなみにさっき思いついたというか考えたんですけど、ライルは服飾系老舗メーカーの広報担当で、ハレルヤは雑誌モデルです。
あくまで妄想(笑
うん…この設定でグッコミ新刊書こうとしてるなんて、そんな事は決してないんだ。
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