忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

悩みの種は育つばかり

※1期年齢逆転設定(MAINのパラレル「年齢逆転」参照)
ロックオンは確信犯










さて、どうしよう。

クール、という表現が一番しっくりとくる顔をしているのにひとたび喋り始めればそんな印象など吹き飛んでしまう、色々な意味で損な男アレルヤ・ハプティズムは、今日も無表情のまま必死に悩んでいた。
端から見ればいつも通りなのだが、見る者が見れば悩んでいるのだとすぐに分かる。
そしてその悩みの原因は、殆どの場合彼の弟分の事だ。
その名もロックオン・ストラトス。
なまじ世渡りがうまいだけに、簡単にあしらうこともできない、頼りになるが少し厄介な弟分である。



まだ成人もしていないのだが、ロックオンはとにかく世間慣れしている。
擦れているところもあるがそれを感じさせない穏やかな物腰で、この私設武装組織ソレスタル・ビーイングに入ったばかりだというのに早くも組織のメンバーたちに馴染み始めていた。
それは勿論いい事だ。
最早世話役を命じられたアレルヤの手など必要ないではないか、と思える程に彼は組織における色々なルールを覚え、顔見知りもできている。

しかし、少しだけ感情的になりやすく、それを抑えきれないという少年らしい一面も持ち合わせていた。
主にアレルヤが世話役としての本領を発揮するのは、そういう時である。

たとえば訓練時、思わず本気になってしまっている彼の暴走を食い止めることだったり、ちょっと眠れない夜なんかに雑談に付き合ってやったり、という程度なので、やはりというかなんというか、世話役の名を返上しなければいけないのでは、と思える程に弟分は手がかからなかった。
…と思っているのは実はアレルヤだけであり、実は暴走を止める、なんていうのは下手に技能がある分大変難しい事であったりするのだが―――とてつもなく謙虚な彼は未だにその事実に気づいていない。









(どうしてあんな事しちゃったんだろうなぁ…)

声にはしないが僅かに後悔の滲むため息を吐いて、アレルヤは自分のロッカーの扉を閉めた。
今日はティエリアとの合同訓練だったので、すぐ隣にはほぼ同じタイミングで着替えを終えたティエリアが怪訝な顔をして立っている。
最初の頃は誰とも馴れ合うつもりはない、といわんばかりの態度だった彼だが、段々と彼も態度が軟化しつつあった。
そのティエリアが、僅かに眉を持ち上げてアレルヤへと視線をあわせてくる。

「ロックオン・ストラトスと何があった?」

「…ロックオンとの事だって良く分かるね」

力なく言葉を返すと、お前の悩みは殆どロックオン絡みだ、ときっぱり返されてアレルヤはいよいよがっくりと肩を落とす。

「……色々あったんだ」

「奴が問題を起こしたのか」

「いや、彼が起こしたっていうか」

急に表情を険しくしたティエリアに、慌てて弁明をしようと口を開きかけたアレルヤを妨害するようなタイミングで、今度は扉が急に開いた。

「ロックオン!?」

「訓練、終わったんだろう?一緒に食事でも、と思って迎えにきたんだが」

にっと笑いかけながらすたすたと中へと入ってきたのは、話題の中心人物ロックオンである。
目はしっかりとアレルヤを捉えてはいるが、同じ部屋にいたティエリアへの挨拶も欠かさずしている。
しかしながら、問題はそこではない。

彼は極自然な動作でアレルヤへと近づいていくと、肩に手を乗せて軽く挨拶のキスを仕掛けてきたのだ。
勿論それは対恋人へのようなものではなく、いわゆる家族や友人相手の挨拶と同じ程度のものなのだが、こうした文化にあまり馴染みのないアレルヤにとっては、大きな戸惑いがつきまとう。
実はこれが、最近のアレルヤの悩みの種なのである。

「それじゃ、ティエリア。後でな」

固まっている彼にひらひらと手を振って見せると、ロックオンはそのままアレルヤを引っ張って部屋を後にする。
唐突に現れて場を乱して去っていくその様は、まるで突風のようだ。
ティエリアがたっぷり十秒以上経過してから憤慨したのは言うまでもない。

そしてアレルヤが何も言えないのは、実は理由がある。
発端は、先日の地上で休暇を過ごした際の出来事だ。



















地上に降りるというロックオンの目付け役として半ば強制的に一緒に地上へと来ていたアレルヤは、自分の休暇を満足に楽しむ間もなく、あれこれと歩き回る彼に引っ張られ続けていた。

それまでのアレルヤの休暇といえば、ただ本屋で気に入った本を買って読み続けるか、ただトレーニングをして過ごすだけだったのだが―――彼がやってきてからというもの、そんな暇はなくなってしまった。
しかし、それが嫌だという訳では決してない。
休暇の過ごし方が分からなかったアレルヤにとって、ロックオンが望んでいるいないに関わらず、こうして誰かの為に時間を過ごせることは何よりもうれしかったのだ。
その感情が伝わったのかは分からないが、休暇の最中、不思議とロックオンの機嫌も良かったので、特にトラブルもなく休暇を過ごすことができた。
ただ、彼は何を思ったのか、休暇を過ごしていた部屋で、家族ごっこのようなやりとりを頻繁に求めてきた。
トレミーにいるときとはまた違うことをしたい、と言い出した彼に困った挙句、アレルヤは娯楽映画でたまたま見た挨拶のキスを思い出し、実行したのだが。

『…今のは』

『ロックオンの故郷で一般的だったかどうかは分からないし、僕も映画で見ただけだったけど……不満だったかい?』

『いや、大歓迎だ』

嫌がっている風ではなかったが念のため聞いてみると、即座にそんな返事が返って来た。
そしてすぐに、挨拶返しとばかりにキスを仕掛けられる。

『口じゃなくて、頬だよ、ロックオン』

かなり唇に近い場所にされたキスに驚きながらアレルヤが声を荒げると、ロックオンが悪戯っぽく笑って「今したところも頬だ」と言い張って、結局アレルヤが諦めることになってしまった。
思えば、この「諦め」が全ての原因だろう。









以降、休暇が終わってからも彼の挨拶はこれになってしまっている。
勿論彼もある程度場所は弁えてくれるのだが…その日最初に出会った時は、どうやらどんな場所であってもどうしても挨拶のキスをしたいらしい。
タイミング悪く朝一番に彼を起こしに行けなかった(実は彼を起こすこともアレルヤの仕事のひとつなのだ)から、どうしようと思っていたのだが―――なんとも最悪のタイミングで挨拶をする羽目になってしまった。
後でティエリアに会うのが恐ろしい。

今度からはなにがあっても朝一番に彼に会いにいかなければ、と自分の腕を引く悩みの種―――弟分の手を見ながら、アレルヤは諦念のため息を吐いた。









 

+++++++++++++++++++++++++++++
これ書いてて改めてアレルヤってロックオンいなかったらどういう大人になってたんだろうと思います。
ロックオンに教えるって立場になったら途端に何書いたらいいかわかんなくなって本気で愕然とした(笑)
きっと年齢逆転してもロックオンはアレルヤに何かしら教える立場なんだろうなと思う
…それを描こう。よし。

苦労人で5のお題
お題配布元【メシア】http://meshia.xxxxxxxx.jp/
PR

Copyright © とりあえず置場 : All rights reserved

「とりあえず置場」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]